日本の書店で売られている文庫本の「かたち」をどう思いますか?

かさばらず、持ち運びやすいのでどこでも読書を楽しめる文庫本。通勤や通学の友としても親しまれる書籍のひとつです。お気に入りの作品であれば、ハードカバーと文庫本の両方をそろえているという人もいるのでは。でも、洋書では少し背が高いペーパーバッグはあっても文庫本サイズの作品は見かけませんよね。

そこで今回は、日本在住の外国人20名に「日本の書店で売られている文庫本の「かたち」をどう思いますか?」と質問してみました。

■いいですね。小さいので混雑している電車などでも読みやすいです。(スウェーデン/40代後半/女性)
■小さくてポケットに入るので便利です。(オーストラリア/40代前半/男性)
■サイズが小さくて持ち運びしやすくて便利。(ドイツ/30代後半/男性)
■かわいくて便利です。(ポーランド/20代後半/女性)
■持ち歩きには便利なのでいいと思います。(中国/30代前半/女性)
■持ちやすい。(トルコ/20代後半/女性)
■もちやすい。(韓国/40代後半/男性)
■日本の独特な形で便利だと思います(イタリア/30代後半/女性)
■便利。(イギリス/40代後半/男性)
■軽くって運びやすい。(スペイン/30代後半/男性)

回答の大半がよい評価だった今回。まずは「持ち運びに便利」関連の回答です。文庫版は基本的にA6サイズ、並製で価格も安いので気軽に手にすることができます。その始まりは1927年に創刊された岩波文庫。古典作品を普及させるために発行されたもので、戦後になると多くの出版社からも発行されるようになりました。

「混雑している電車でも読みやすい」という補足もあるように、駅のキオスクにはほぼ文庫本の棚があり、電車と文庫本の親和性の高さを表しています。ちなみに、やはり駅だけあってキオスクでは鉄道ミステリー小説を多く発表する西村京太郎作品が人気だそうです(キオスクでの売り上げを見込んでいるため、新作の大半は文庫版で出るのだとか!)。

■小さくて便利です。常にカバーをかける理由はわからないですが、帯が作品のアピールをしていていいと思います。(フランス/30代後半/男性)
■持ちやすく、カバーされるのでプライバシーが守られていていいと思います。(ロシア/20代後半/女性)

同じくサイズには高評価、加えてカバーについて言及した回答です。本を守るため、読んでいる本で性格や趣味嗜好を知られたくないから、気分を変えたいからなど、カバーをつける理由は人によってさまざま。海外との文化の違いもありますが、こちらに関しては個人の感覚にも関係がありそうです。回答にもある「帯」がつけられるようになったのは、1914年発行の阿部次郎著「三太郎の日記」が最初と言われています(ただし、この作品は文庫ではありません)。

■形がある程度そろっているのでよい。(インドネシア/30代前半/女性)
■よくやっていると思います。きれいです。(シリア/30代前半/男性)
■いいね!(ブラジル/50代前半/女性)
■いいと思う。(ペルー/40代後半/男性)

形がそろう、美しいという回答。インテリア雑誌などでは、見せる収納の一つにカバーナシの状態で文庫本を積み重ねたりしていることもありますよね。確かにシンプルなのでオブジェ的にも見えてよさそうです。ちなみに岩波文庫では、フランス装風のしゃれた雰囲気を出すため、あえて天面(本の上側)をそろえずギザギザの断面にしているのだそうですよ。

■本が弱そうです。(アメリカ/30代後半/男性)

ハードカバーに比べると、確かに強そうには見えません。しかし、意外と強度があるのが日本の文庫本。背と本文、表紙との接合強度を高めるためにのりや紙などさまざまな部分で研究が重ねられており、よほどのことでもなければバラバラになることもありません(折れることはありますが)。小さな文庫本にも、世界トップクラスの印刷技術が凝縮されているんです。

どこでも買えて、どこでも読める文庫本。ミニメモのように、日本人は昔から小さな判型に親しんでいますが、それは書籍でも同じようです。日本人が文庫本に見いだした合理性や便利さは、どうやら海外のみなさんにもきちんと届いているようですね。