東北大学と理化学研究所(理研)は5月13日、帯電した絶縁体試料表面近傍で電子が次第に蓄積する様子を、電子線ホログラフィにより電場の乱れとして検出するとともに、その電子集団の移動の様子を可視化することに成功したと発表した。

同成果は、東北大学 多元物質科学研究所の進藤大輔教授(理化学研究所 創発物性科学研究センター チームリーダー)、赤瀬善太郎助教、理化学研究所の会沢真二テクニカルスタッフらによるもの。詳細は、米国の顕微鏡専門誌「Microscopy and Microanalysis」のオンライン版に掲載された。

多様な電子の振る舞いを直接観察することは、身の回りの様々な電気現象の機構を解明する上で、また先端デバイスの高機能化を実現する上でも、重要な研究課題だった。そこで、研究グループは、電磁場を可視化できる電子線ホログラフィを用いて電子の運動を追跡できないか実験を繰り返す中、絶縁体で複雑な形態をもつ生体試料の帯電効果を利用することで、電子が次第に蓄積する様子や複雑な電場の中で、電子が集団的に運動する様子を電場の乱れを通して直接観察することに成功した。

具体的には、電子線ホログラフィの振幅再生法を駆使することにより、電子の動きに伴う電場の乱れが検出できた。この振幅再生像を連続撮影することにより、絶縁体試料表面近傍に電子が蓄積する様子とその電子の集団的な運動を可視化できたという。これらの成果を踏まえ、今回確立した観察法を用いて、今後は様々な電子の流れの観察にも適用し、身の回りの複雑な電気現象の機構解明や先端デバイスの高機能化への応用展開が期待されるとコメントしている。

ネズミの坐骨神経の微細線維(青)周辺の振幅再生像(赤と白で2値化)。時間経過とともに電子の動きに伴う電場の乱れが生じた赤色部が枝に囲まれた領域内の矢印の部分に明瞭に観察される