京都大学は4月8日、炭素と水素からなる次世代半導体として期待される、幅1nm以下の極細ナノ炭素細線であるグラフェンナノリボン(GNR)を従来に比べ、高効率で合成する手法を開発したと発表した。

同成果は、同大 エネルギー理工学研究所の坂口浩司教授、中江隆博助教らによるもの。詳細は、ドイツ科学誌「Advanced Materials」のオンライン版に掲載された。

GNRとは、炭素原子の2次元シートであるグラフェンをリボン状に切り出した細線状のナノ物質である。2次元シート状のグラフェンは金属的性質を示すため応用が限定されるが、GNRは細線幅、および炭素の六角形格子の構造を制御することにより、望みの特性を持つ半導体となることが理論的に分かっており、現在主流のシリコンに代わる次世代半導体材料として太陽電池や電子素子への応用が期待されている。

従来のGNR合成法では、10-10Torrの超高真空環境が必要であり、かつ反応中間体であるラジカルを低密度でしか発生できないため合成収率が低く、また幅を制御した細線を作るのが困難であることが問題だった。

今回開発したラジカル重合型-化学気相成長法は、2ゾーン独立加熱を用いることで、原料分子から非常に高密度にラジカル中間体を発生させて金属基板に吹きかけることにより、1Torrの低真空にもかかわらず、従来法の10倍の高効率でさまざまな線幅を持つ極細GNRを合成できる。この極細GNRを用いたフィルムは、従来の有機太陽太陽電池に用いられる共役系高分子(ポリ3-ヘキシルチオフェン)の3倍の光電導性を示し、高効率太陽電池材料としての応用が期待されるとコメントしている。

幅1nm以下の3種類のアームチェアエッジ型GNRを合成