名古屋大学(名大)は、1ステップの転写プロセスにより、カーボンナノチューブ(CNT)薄膜の微細パターンを10μm以下の解像度でプラスチック上に形成できる技術を開発したと発表した。

同成果は、同大の大野雄高准教授らによるもの。早稲田大学の野田優教授らと共同で行われた。詳細は、科学雑誌「ACS Nano」オンライン版に掲載された。

透明導電膜を用いてタッチパネルなどのデバイスを実現するためには、透明導電膜を用途に応じた形状にパターニングする必要があるが、従来、煩雑なエッチングプロセスが用いられており、コスト高の要因になっていた。また、CNT薄膜のパターニングは、基板全面に成膜した後、リソグラフィとプラズマエッチングによって不要な部分を除去する方法が用いられていた。この場合、プロセスが煩雑で高額な装置が必要なのに加え、多くの化学薬品を使用する。

そこで今回、転写プロセスにより、CNT薄膜をワンステップで基板上にパターニングする技術を開発した。同技術では、CNTを浮遊触媒化学気相成長(FC-CVD)法により成長させ、メンブレンフィルタにより濾過・捕集する。その際、予めメンブレンフィルタ上にフォトリソグラフィによりレジストの微細パターンを形成しておくことで、CNTはレジストの開口部のみに捕集される。メンブレンフィルタ上に準備されたCNT薄膜は容易に所望の基板に転写でき、CNTパターンが形成できるという。

研究グループでは、同技術は非真空、非リソグラフィプロセスであるだけでなく、CNTの材料使用効率が100%であり、タッチパネルなどの透明導電膜デバイスの省エネルギー、省資源製造につながる技術であるとコメントしている。

CNT薄膜の1ステップパターニング。(a)プロセス概略図、(b)プラスチックフィルム上に形成したグリッド状のCNT薄膜、(c)レーザ顕微鏡により測定した形状像、(d)断面形状