東陽テクニカは3月25日、独Bruker AXSのエネルギー分散型微小部蛍光X線分析装置「M4 TORNADO型」を発表した。価格は2700万円(税別)から。

試験試料にX線や電子線を照射すると、その試料に含まれる元素特有のX線が発生する。このX線は蛍光X線と呼ばれ、試験試料に含まれる元素(化学組成)の解析に用いられる。電子線を用いて蛍光X線を発生させる場合は微小領域の分析が可能だが、真空環境・試料の導電性が必要で、試料サイズも制限を受ける。さらに、電子線の照射により、試料が発熱などのダメージを受ける可能性もある。一方、X線を用いて蛍光X線を発生させる場合は、試験環境の制限を受けず、試料の導電性も不要で大型試料の分析が可能であり、試料に対するダメージもない。

同製品は、独自のX線光学系を採用し、高輝度を維持したまま最小分析スポットを0.025mmまで小さくするが可能。電子顕微用として大口径検出器(SDD:シリコンドリフトディテクタ)を標準装備することで、微小スポットでの高検出効率も同時に実現した。また、デスクトップタイプにもかかわらず、200mm×160mm×120mmサイズまでの試料が非破壊で分析可能。最速200mm/秒の高速試料ステージと微小領域に対する高検出効率機能を組み合わせることにより、1cm2当たり約3分と高速で、試験対象の元素マッピングデータを取得することが可能になった。大型の試料に対応することで、プリント基板や電子部品、玩具に対しても、そのままの大きさでRoHS規制の対象となる有害物質を検出できる。さらに、検出する蛍光X線の強度から膜厚の測定も可能になる。

この他、試料サイズだけでなく試料の状態にも柔軟に対応できる。固体・紛体に加え、水分を含んだ状態や液体も評価可能となっている。これにより、電子部品や無機材料だけでなく、生体試料へ適用できる。また、高速分析可機能により試料へのダメージも軽減した。そして、ファンダメンタルパラメータ法をベースにした独自のソフトウェアを用いることで、スタンダードレスな定量評価が可能になった。同機能により複合材料に対しても、定量的な元素分析ができるという。

元素情報の検出や元素マッピングは、様々な分野で利用できる。例えば、プリント基板/電子部品では、マッピング画像から目的とする元素の有無や存在位置が確認可能。有害物質のスクリーニングや、故障解析に利用できる。マッピング画像を構成する各ピクセルには、すべての元素情報(スペクトル情報)が含まれており、試験後に線分析/面分析を行うこともできる。

独Bruker AXSのエネルギー分散型微小部蛍光X線分析装置「M4 TORNADO型」

プリント基板の画像比較。(左)CCDによる光学像、(右)元素マッピング画像