東工大、温度が上がると収縮する負の熱膨張の材料を発見

東京工業大学(東工大)は2月7日、京都大学との共同研究により、ビスマス(Bi)・ランタノイド(Ln)・ニッケル(Ni)酸化物「Bi1-xLnxNiO3」が樹脂材料の熱膨張に匹敵するほどの巨大な負の熱膨張を示し、さらにその動作温度範囲を室温付近の400~200Kの間でコントロールできることを発見したと発表した。

成果は、東工大 応用セラミックス研究所の岡研吾助教、同・東正樹教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、2013年8月8日付けで「Applied Physics Letters」オンライン版に掲載済みだ。

電子部品や光通信などのナノスケールでの加工精度が必要とされる産業では、熱膨張によるほんのわずかな位置ズレですら致命的な問題となる。この問題を解決するアプローチとして、温度を上げると体積が収縮する負の熱膨張現象を応用し、構造材の熱膨張を抑制する手法が注目を集めているところだ。

Bi1-xLnxNiO3はビスマス、ニッケル、酸素が「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造を取った酸化物で、ビスマスの一部をランタノイド元素で置換しており、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、ユウロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)が含まれ、6GPa・1000℃という高圧高温条件で合成される。

一連の試料の負の熱膨張挙動を、平均格子体積の温度変化を調べる「粉末X線回折法」と直接試料片長さの温度変化を調べる「熱機械分析法」を用いて評価し、組成依存性を明らかにすることを目的として研究が行われた。なお、X線回折法はX線が結晶格子で回折を示す現象を利用し、物質の結晶構造(格子体積の大きさ)や内容物の割合などを調べる手法のことで、熱機械分析法とは圧縮、引張り、曲げなどの荷重を加えながら、試料の温度を変化させ、試料の変形を直接的に測定する方法のことをいう。

今回の研究により、Bi0.95Ln0.05NiO3(Ln=La、Nd、Eu、Dy)という組成で、線熱膨張係数αL=70×10-6/Kを超える巨大な負の熱膨張が起こることが見出された。この値は、熱膨張の大きな樹脂材料に匹敵するという。Bi0.95La0.05NiO3では280~400Kという室温以上の実用性の高い温度領域で負の熱膨張を示す。これらの材料の負の熱膨張が起こる温度は、置換するランタノイドのイオンを小さくすることで高く、また置換量を増やすことで低くコントロールすることが可能であることも併せて発見された。

今回の成果により、Bi1-xLnxNiO3は樹脂材料に匹敵するほど大きな負の熱膨張を示すこと、さらにその特性はチューニング可能なことが判明。よって、所望の温度範囲で構造材の正の熱膨張を抑制可能なことが期待できる材料だとしている。

画像1(左):Bi1-xLnxNiO3における温度誘起電荷移動相転移。画像2(中):粉末X線回折パターンから求めた平均格子体積の温度変化。画像3(右):熱機械分析装置で測定した試料片長さの温度変



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