Facebook傘下の米Instagramは12月12日(現地時間)、Instagramユーザーに対して撮影画像を直接送ることができる「Instagram Direct(インスタグラム ダイレクト)」を発表した。米Instagramのプロダクト・ディレクターであるピーター・ダン氏と、Instagram Directの開発責任者を務めたサミー・クルー氏に国際テレビ会議システムを通して取材を行ったので、その模様をレポートする。

初めに、今回の新機能「Instagram Direct」について説明する。Twitterにおける「Direct Message」や、Facebookにおける「Messenger」のような機能が「Instagram Direct」で、通常はオープンに公開される投稿とは違って、特定のユーザーに限定してInstagramで加工した写真や動画を送ることができる。

Directでは、LINEのような「開封通知」が存在し、開封されると相手のアイコン下部にチェックマークが付く。また、相手側が送られてきた写真に対して返信コメントを付けた場合には吹き出しマークが付き、いいね!を付けた場合にはハートマークが付く。

送信相手は最大15名まで指定することができ、相手からフォローされていない場合でも送ることができる。一方で、フォローしていないにも関わらず画像が送られてきた場合、拒否することも可能となっている。

Instagram Directはシンプルかつ簡単に写真を特定の人に送信できる

米Instagram プロダクト・ディレクター ピーター・ダン氏(左)とInstagram Direct 開発責任者 サミー・クルー氏

Instagram Directの開発責任者であるサミー・クルー氏はInstagramをユーザーがどのように利用しているか、最初に説明してくれた。

「Instagramは日常の美しいシーンを切り取って、シェアしていくサービスとして多くの方に利用していただいている。小さなコミュニティをはじめ、プロの写真家、それにとどまらず老若男女がシェアを行っている」(クルー氏)

クルー氏が語る美しいシーンとは、旅行などの特別な行事だけではなく、ルーチンの中のワンシーンであることもあるという。「例えば、朝に飲んだお茶の写真であったり、たまたま通りかかった公園の風景であったり、外を見てみたら夕陽が綺麗だったり。そういった情景を、手軽に、しかも美しく切り取ることができるのがInstagramだ」(同氏)

2010年10月にサービスを開始して以来、月間1億5000万ユーザーがアクティブに利用するまでに成長したInstagram。そんな中で、動画対応に続く新機能拡張に至った背景をこう説明する。

「広くシェアをするニーズがある一方で、限られた人にシェアをしたいというニーズもある。例えば親友と旅行をしているときに、親にだけ状況を伝えたいといったシーンや、犬を散歩している場面を夫や妻にだけ送りたいというシーン。これらのシェアをシンプルかつ簡単にできるようにしたものがInstagram Directだ」(同氏)

非常にシンプルな投稿画面。通常の投稿とDirectは簡単に切り替えることができる

クルー氏の「シンプルかつ簡単に」という方針は、Instagramのサービス当初からのもの。撮影から編集、共有まで、ワンストップで行えるInstagramのメリットをそのままDirectでも提供している。

Instagram Directという機能は、ある意味TwitterのDMやFacebookのMessengerによって画像を送信してしまえば済む話だ。しかし、プロダクト・ディレクターのピーター・ダン氏は、それらの機能とは異なるユーザー体験を提供していると語る。

「実際に見比べてもらえると分かるが、FacebookのMessengerなどの個別メッセージ機能は、テキストがベースになる。一方で、Instagram Directでは、写真や動画のコンテンツがベースとなって美しく表示されることを狙っている。こういう表示は、Instagramが得意としているビジュアルメディアとしての要素が非常に大きい。画像や動画が、コミュニケーションのきっかけになると嬉しい」(ダン氏)

既読やいいね!、コメントがアイコン下部のチェックマークで確認できる

Facebook傘下のサービスとして知名度が高まった感のあるInstagramだが、Facebook Messengerと連携したDirectの送信機能が提供されないのか気になるところだ。

これについてダン氏は「サービスロンチ時に多くの機能を搭載することでユーザーにとって分かりにくいことのないよう、シンプルにすることを意識した。わかりにくいと思われるよりは、それがいいと思っているし、もちろん検討はしている」と答えた。

フォローされていないユーザーからのDirectが届く場合もあるが、ブロックすることができる

Instagramはあらゆるユーザーが写真家になれる場所

Instagramが動画投稿機能を追加したのは6月のことだが、ユーザーの利用状況はどうなのだろうか。

「ビデオ機能については私たち自身が非常にワクワクしている。機能の発表後、24時間で500万件もの動画がアップロードされた。その上、米プロバスケットボールチームのMiami HeatがNBA Finalsで優勝したときは、1分あたり40時間分の動画がアップロードされた」(ダン氏)

動画撮影では、単なる撮影機能だけではなく「シネマ機能」と呼ばれる独自の動画手ブレ補正機能をアプリに組み込んでおり、Instagramで撮影する付加価値も提供していることを強調していた。

最後にダン氏が、Instagramのプラットフォームとしての在り方について語ってくれた。

「一つだけ伝えたいのは、最初はプロの写真家が幅広いオーディエンスに対して発信する場所だったInstagramが、今や全てのユーザーが写真家になれる場所に変わったということ。コミュニティや国境を越えてファンと繋がることができる場所。ジャーナリストのコミュニティでは、北朝鮮の人に世界がどう動いているかを伝えるための手段になっていたりする。今後もビジュアルメディアとしてきっかけを作っていければと思う」