富士通および富士通セミコンダクター(FSL)は11月28日、GaNパワーデバイスを手掛ける米Transphormと、自社のGaNパワーデバイス事業を統合する契約、ならびに富士通とFSLによるTransphormへの少数株主持ち分の取得に関する契約を締結したことを発表した。

従来、青色LEDなどに用いられてきたGaNだが、近年、その特性を生かしたパワー半導体への適用に向けた研究が世界各所で進められている。富士通もGaNパワー半導体の実用化に向けた研究を進めており、2011年末に600V耐圧品の、2013年7月には150V耐圧品のサンプル出荷を行っていたが、Transphormはすでに高耐圧用GaNパワー半導体のJEDEC認定製品を発表しており、さらなる性能・品質・生産性の向上を図りたいという思惑があったこともあり、3社が持つ技術力や生産能力などを組み合わせ、補完することで、事業規模の拡大と製品の価格競争力の向上、ならびに完成度を高めたGaNパワー半導体ソリューションを早期に市場に提供することが可能になるとして統合に至ったとする。

今回の統合により、TransphormはFSLのGaNパワー半導体の生産を担当してきた会津若松工場にて高品質・高耐圧GaNパワー半導体を生産することが可能となり、同工場が保有する低コスト量産技術、信頼性技術、顧客品質技術などを活用することができるようになる。また、富士通としては、GaN RFデバイスの事業は継続して行っていくとしており、今後もGaNデバイスの先行研究およびRFや電源モジュールなどの応用開発を継続して行っていく方針としている。

なお、富士通/FSLは、日本においてGaNパワーデバイス事業の新会社を設立し、両社が保有するGaNパワーデバイスの設計・開発資産や知的財産権を新会社に拠出する予定。また両社は新会社の株式をTransphormに現物出資し、その対価としてTransphormの株式を取得する方式を取るとしており、これによりTransphormは新会社を完全子会社とする。また、富士通とFSLがTransphormに対する現金出資を行い、少数株主としてTransphormの経営に関与していく予定。これまで、富士通およびFSLにてGaNパワーデバイス事業に直接従事してきた従業員は新会社に出向し、Transphormの従業員とともに、継続して開発および事業に従事していくこととなる見込みだという。