ルネサス エレクトロニクスは11月25日、32ビットマイコン「RX631/63N」向け機能安全ソリューションを開発したと発表した。

近年、大規模、複雑化している工場や産業プラントでは、産業機器の故障が原因とされる事故が報告され、従業員および社会への影響・経済的損失が問題化している。このため、故障しても安全を維持できる"機能安全"の考え方が広がっている。欧州機械指令においても、機器の機能安全への対応が求められ、機能安全規格であるIEC61508などへの対応が進んでいる。機能安全規格への対応には、従来のシステム開発に加え、セーフティ分析と呼ばれる、安全関連部に対する故障分析と故障診断手法およびその診断率検討といった、新たな作業が必要であり、規格の難解さも相まって、開発者の負担となっている。

今回のソリューションは、システム開発者が自ら実施していたこれらの作業を、ルネサスにてあらかじめ実施され、その結果がセーフティマニュアルと自己診断ソフトウェアライブラリとして提供される。新ソリューションを導入すると、セーフティマニュアルから必要な情報を選択し、提供される自己診断ソフトウェアライブラリを活用することで、安全関連部の開発作業を進めることが可能。これにより、安全関連部におけるマイコンに関するシステム開発期間を半分程度に短縮できたという事例もあるという。

具体的には、セーフティマニュアルを開発時のリファレンスとして活用できる。IEC61508対応システムをターゲットとするマイコン内部機能ブロックごとのセーフティ分析が実施され、その結果がセーフティマニュアルとして提供される。同マニュアルにより、「RX」マイコン内蔵のハードウェア診断機能の活用方法やソフトウェアによる診断手法、各種セーフティパラメータの算出結果が提示されるため、機能安全システム開発時のリファレンスとして活用できる。なお、CPUやRAM、フラッシュROM以外のマイコン機能に関しては、アプリケーションの依存度が高いことから、セーフティマニュアルにおいては診断手法のみが提示される。これに沿ったプログラムを作成することで機能安全システムとして最適な診断ができる。

CPUとRAM、フラッシュROMに関しては、自己診断ソフトウェアライブラリが提供される。CPU部分の自己診断ソフトウェアは、 フォールトシミュレーション評価による診断率検証を実施することにより、診断率の提示根拠を明確化しており、機能安全システム開発の効率化に寄与する。

さらに、同ソリューションは、産業機器で幅広く採用されている「RX631/63N」に対応する。「RX631/63N」は産業機器の機能安全実現に最適な電力性能、従来システムからの継承性を有しているため、産業機器への機能安全システムの搭載を容易にする。今後、他の「RX」ファミリ製品への対応も順次計画しているという。

同ソリューションの分析・診断手法の有効性・IEC61508規格への適合性については、全ての開発ステップにおいて認証機関「テュフ ラインランド」への確認のもと開発実施しているとしている。

なお、同ソリューションは、CD-ROMで2014年2月より提供が開始される予定。