すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム」で撮影したアイソン彗星(現地時間11月5日明け方)の画像。上が北、左下が太陽方向
(提供:国立天文台)

国立天文台は、ハワイ島マウナケア(標高4,200m)山頂にある「すばる望遠鏡」の超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(Hyper Suprime-Cam)」で撮影した、太陽に接近しつつある「アイソン彗星」の画像を公開した。青白く光る彗星の“尾”が、満月の見かけの直径の2倍以上に伸びている様子が見えている。

アイソン彗星は昨年9月に、「国際科学光学ネットワーク(ISON)」に所属する2人の科学者が発見し、“ISON”と名付けられた。今月29日午前4時9分(日本時間)に太陽に最接近した後は、2度と太陽系には戻って来ない“一期一会”の彗星だ。しかも、半径約70万キロメートルの太陽の表面からすぐそばの120万キロメートルの距離を通過するので、彗星本体が分裂・崩壊して、消えてしまう可能性もあるという。

彗星は太陽に近づくにつれ、強まる熱や太陽風によって長く“尾”を引くようになる。すばる望遠鏡の最新カメラが5日明け方(現地時間)撮影したアイソン彗星は、太陽とは1億3,000キロメートルの距離にあり、頭部の“核”と“尾”を含めた長さは視野角1.5度ほどになっていた(満月の視野角は0.5度)。さらに尾は2筋見えており、これは「(核から出た)チリの尾とガスの尾が分かれて見えているのかもしれない」と副台長の渡部潤一さん。

アイソン彗星はこれから、近日点通過の29日の前までが見ごろ。どれだけ明るさが増すかは不明だが、「双眼鏡や肉眼でも見える可能性が十分にある」という。さらに崩壊せずに“無事に”太陽を回って来れば、来月4日ごろから、再び明け方の東の低空に姿を見せるはずだ。

アイソン彗星の太陽接近の模様は、国際宇宙ステーションで日本人初の船長を務める若田光一さんが超高感度4Kカメラで撮影観測する。米航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)の太陽観測衛星「SOHO」もコロナ常時観測装置(LASCO C3)で画像を捉え、ネット上にも公開する。同装置では27日ごろから、アイソン彗星の姿が画面に入って来るかもしれないという。

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