太陽系天体の軌道概略図
(国立天文台のホームページから)

ハレー彗(すい)星を母天体とする「オリオン座流星群」が今月21日夜から翌日未明にかけて観測のチャンスを迎える。2006、07年に突然の大出現をみせた同流星群だが、国立天文台などによると、今回はあいにく月明かりが邪魔をして、見える数も少なそうだ。それに代わって、同じハレー彗星由来の「みずがめ座η(イータ)流星群」が今年5月に突発出現したことから、来年も連続の大出現が期待されている。

オリオン座流星群は、ハレー彗星(公転周期75.3年)が軌道上でまき散らすダスト(ちり)の帯に地球が突入し、ダストの粒々が地球大気の中で流星となって光る。毎年10月2日ごろから11月7日ごろに、オリオン座の方向から飛んで来るので、この名が付いた。

同流星群は、ふたご座流星群(12月)、しぶんぎ座流星群(1月)、ペルセウス座流星群(8月)の“三大流星群”に比べて中堅規模の流星群で、通常は1時間あたり10-20個ほどの観測数だ。ところが06年に同100個以上が大出現し、翌年も同50-70個出現するなど、10年まで活発な状況が続いた。

この突然の大出現について、07年に国立天文台の佐藤幹哉さん(現在、かわさき宙と緑の科学館)と渡部潤一さんが、ハレー彗星やダストの帯などの軌道を詳しく計算し、紀元前1265年と同1197年、同910年に放出されたダストの群れに、地球が接近したことで起きたことが分かった。このダストの群れは約71年周期で太陽を回っているので、次のオリオン座流星群の大出現は2077年ごろだという。

もう一方の、ハレー彗星と地球の交点で見られるのが「みずがめ座η(イータ)流星群」だ。IMO(国際流星機構)によると今年5月6、7日に、天頂出現数(ZHR)が例年の2-3倍となる120-140個の流星が世界各国で観測された。日本国内でも流星のほか、大きく光るマイナス10等の「火球」も観測された。この大出現も、ハレー彗星が紀元前1197年と同910年に放出したダストによるもので、事前に佐藤さんが予測し、IMOなどに広く観測を呼び掛けていた。

「アイソン彗星」が消える!?

アイソン彗星の動き(11月)
(提供:国立天文台天文情報センター)

これからの天体ショーで、さらに注目されるのが、来月29日に太陽に大接近する「アイソン(ISON)彗星」だ。その前後には、長く尾を引くマイナス9等ほどに輝きを増した“ほうき星”が、肉眼でも観察できるかもしれない。

アイソン彗星は、昨年9月に「国際科学光学ネットワーク」(ISON)所属の2人が発見し、その名を付けた。太陽を1度だけ回って戻って来ない彗星で、太陽の中心から0.01247天文単位(約190万キロメートル)まで接近する(1天文単位は太陽と地球の距離)。あまりに太陽に近いので、彗星の本体が分裂したり、崩壊するなどして、消えてしまう可能性もあるという。

地球からは11月半ばすぎから、日の出前の東の空で、肉眼でも見分けられるようになり、その後明るさを増していくが、高度は徐々に低く、太陽と近くなるので観測はしにくい。29日の近日点通過後、無事に残っていれば、12月に入って再び、日の出前の東の空に姿を現すはずだ。

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