産業技術総合研究所(産総研)は10月17日、植物の遺伝子組換え技術を利用して、植物に付加価値の高い物質、特に医薬品原材料などを作らせる研究開発の一環として産総研北海道センター内に設置、稼働させてきた「完全密閉型遺伝子組換え植物工場(産総研植物工場)」にて生み出されたイヌインターフェロンαを産生する遺伝子組換えイチゴの果実を原料としたイヌの歯肉炎軽減剤が、動物用医薬品製造販売承認申請の認可を受けたことを発表した。
同成果は、産総研 生物プロセス研究部門 植物分子工学研究グループと、ホクサン、北里研究所(現 北里第一三共ワクチン)らによるもの。
産総研植物工場では太陽光の代わりに人工光を用い、また遺伝子組換え植物が外部に拡散することを防ぐために完全密閉型としているため、医薬品原材料などを生産する遺伝子組換え植物を気象条件や立地条件などに左右されずに、計画的・安定的に栽培することが可能であるという特徴を有しており、今回の成果は、そうした特長が、遺伝子組換え植物を原料とした動物用医薬品が開発可能であること、ならびに産総研植物工場が植物による医薬品生産のプラットフォームとなりうることを実証したものになるという。
産総研生物プロセス研究部門は、植物の遺伝子組換え技術を用いた有用・高付加価値物質を生産する技術開発および実用化に向けた研究開発に取り組んできており、関連企業との共同研究や技術などの移転により研究開発を促進してきたほか、産総研北海道センターには、産総研植物工場の技術を社会に橋渡しするための施設として北海道科学技術総合振興センターが運営するグリーンケミカル研究所も設置されていることから、産総研では今後、産総研植物工場およびグリーンケミカル研究所が推進する研究開発において、より多くの医薬品原材料やジャガイモなどの生産作物種に拡大することで、植物工場を活用した物質生産という新たな産業形成の展開につなげたいとしている。