日本点字図書館は10月15日、視覚障がい者など、文字を読むことに対して障がいのある人々の読書環境を向上させる目的で、クラウドソーシングとWeb上のオープンコミュニティを活用した電子書籍の製作実験プロジェクトを開始したことを発表した。

同プロジェクトは日本IBMと東京大学、メディアドライブの協力のもと、2014年3月31日まで実施される。プロジェクトにおいて、日本IBMはクラウドソーシング型の図書校正システム一式を無償貸与し、東京大学はコミュニティサイトを提供する。メディアドライブはOCRソフト「WinReader Pro」のライセンスを無償で貸与する。

日本点字図書館は現在、同プロジェクトに参加する製作支援ボランティアと、製作リクエストとコンテンツの試用を行う障がい当事者を募集している。

プロジェクト概要図

近年、点字図書館をはじめとする視覚障がい者情報提供施設・団体では、点字図書や音声図書に加えて、「テキストDAISY」と呼ばれる形式の電子書籍の製作・提供を行っている。

テキストDAISY図書は、文章を音声で読み上げさせる、文字を拡大させる、見出しやページ単位で移動できるなど、さまざまなアクセシビリティ機能を備えており、利用者は専用の再生端末やPCから、障がいの種類や程度に応じてそれらの機能を使い分けられる。

また、テキストDAISY図書の製作には点訳や朗読といった専門技能が不要なため、点字・音声図書より迅速に提供することができる。

しかし、紙書籍のスキャン画像からOCRソフトでデジタルテキストを作成する際、文字の誤認識のチェックなどを特定のスタッフに任せる従来の方法では、効率化に限界があるという。

そこで今回のプロジェクトでは、OCR処理したデジタルテキストの校正作業にクラウドソーシングを導入し、不特定多数の参加者から協力を得ることによって、製作の迅速化・効率化を目指す。

また、同プロジェクトでは、参加者の活動基盤としてWeb上のオープン・コミュニティを活用する。このオープンコミュニティは、IBM東京基礎研究所が開発し、東京大学が提供するコミュニティサイトと連携している。

利用者はオープンコミュニティで読みたい書籍のテキストDAISY化をリクエストでき、読みたい書籍が特定できない場合でも、ほかの参加者から情報支援を受けることができるという。製作支援ボランティアは、オープンコミュニティを通じて活動に関する質問や情報交換などを行える。