国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は10月10日、複合的地域自殺対策プログラムの自殺企図予防効果の研究を発表した。

同研究は、NCNP認知行動療法センターの大野裕センター長と、岩手医科大学の酒井明夫教授らが研究グループを全国で組織し、複合的地域自殺対策プログラムの自殺企図予防効果を検討したもの。厚生労働科学研究費補助金による「自殺対策のための戦略研究」の一環として実施された。

厚生労働省が発表する「人口動態統計」によれば、平成23年における日本人の死亡順位で、20~39才の第1位が自殺であり、40~49才で第2位、50~54才で第3位となっている。また、自殺死亡者数は平成9年まで2万5千人前後で推移していたが、平成10年に急激に増加し現在も高い水準で推移している。

同研究では、自殺死亡率が長年にわたって高い地域において、1次から3次まである高度な自殺予防対策プログラムを実施し、通常の自殺予防対策を行った対照地区と比較して、自殺企図の発生に効果があるかどうかを検討した。

3.5年間のプログラムの実施により、対照地区と比較して自殺企図の発生率が男性で約23%、65才以上の高齢者で約24%減少したことがわかった。また、自殺が増加しているほかの都市部地域においても同様のプログラムを行ったところ、実施後の自殺企図の発生率は実施前より減ったという。

NCNPでは、同研究により自殺企図予防効果は、性別・世代、地域の特性によって異なることが示されたとし、地域の特性に適した自殺対策の立案に役立てたいという。

自殺既遂および未遂の率比(自殺死亡率が長年にわたって高率な地域)

プログラム実施率(自殺死亡率が長年にわたって高率な地域)