冨士色素は10月11日、金属-空気電池の1つであるアルミニウム-空気電池を2次電池化することに成功したと発表した。

同成果は同社常務取締役である森良平 博士らによるもの。詳細は英国王立化学会の学術誌「RSC Advances」に掲載された。

近年のエネルギー環境の変化により、リチウムイオン電池を超す性能を実現可能な2次電池の開発が求められるようになっている。金属-空気電池は、そうした課題を解決できる電池として期待されるもので、各所で積極的に研究・開発が進められている。その中で同社は、安価で材料として扱いやすく、リチウム-空気電池に次ぐ2番目の理論値容量があると考えられているアルミニウムに着目して研究を進めてきたという。ちなみにリチウム-空気電池の理論値用量は11400Wh/Kgで、アルミニウム-空気電池は8100Wh/Kgとなっている。

同電池は、リチウムなどの空気に酸化されやすく不安定な物質は一切使わないため、空気中で安定に作動しており爆発や燃焼の心配がないため空気中で製造も可能という特長がある。

実際に開発されたアルミニウム-空気電池の電池構造は、負極としてアルミニウム金属板を、電解液として水酸化ナトリウム水溶液を用いて、負極と正極である空気極と電解液の間に酸化物から構成されるアルミニウムイオン伝導体(タングステン酸アルミニウム)を組み合わせたものとなっており、空気中で0.2mA/cm-2の放電レートで放電したところ、初期放電容量は5.3mAh/cm-2となったほか、30回目の放電容量も約4.4mAh/cm-2と、放電容量が8割以上維持されていることが確認されたという。

また、電解質は水酸化ナトリウムの水溶液であり、他の電池構成部材も安価で安全なものであり、リチウムイオン電池などのように爆発や燃焼したりする心配がないほか、現在のリチウムイオン電池より安価に製造することが可能だという。

なお、今回の設計は電解液が蒸発しない構造を採用したが、実際は作成したアルミニウムイオン伝導体の酸化物の多孔性が原因で、実験中も電解液の補充が必要であったことから、今後、実用化に向けてはそうした問題をクリアしていかないといけないと研究グループでは説明している。また、同構造の充放電は1週間可能であることが確認されており、今後は、電解液をより安全で安価なNaClなどに変更してみての検討なども行っていくおか、伝導度の高いアルミニウムイオン伝導性を有するアルミニウムイン伝導体などの使用も検討していくことで、さらなる充放電時間の延長や容量の大型化を図っていく予定といている。