国立がん研究センター がん予防・検診研究センターは、日本人女性を対象としたアルコール摂取量と全脳卒中の発症リスクに関する多目的コホート研究から、女性の健康維持のためには、1日1合未満の節酒が望ましいという結果を得たと発表した。

今回の研究は、1990年に実施した岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部の4保健所(それぞれの呼び名は2012年時点)管内に住んでいる40~59歳の女性および、1993年に実施した茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の5保健所(同)管内に住んでいる40~69歳の女性に対する飲酒習慣を含むアンケートに回答してもらった人のうち、調査開始時にがんや循環器疾患でなかった約4万7000名を2009年まで平均約17年間の追跡調査を行い、アルコール摂取量と脳卒中、虚血性心疾患の発症との関連について調査したもの。

追跡調査の結果、追跡期間中に1864人が脳卒中(内訳は、脳内出血が532人、くも膜下出血が338人、脳梗塞が964人、その他が12人)となったほか、292人が虚血性心疾患にかかっていることが判明。

アンケート結果から算出したアルコール摂取量を、「飲まない」、「時々飲む」、「週に1-74g(日本酒換算で1日に0.5合未満)」、「週に75-149g(0.5-1合未満)」、「週に150g-299g(1-2合未満)」、「週に300g以上(2合以上)」に分けて、「時々飲む」を基準として発症リスクを算出しました。

その結果、全脳卒中については、「時々飲む」に比べて、「週に150-299g」で1.55倍、「週に300g以上」で2.30倍と発症リスクが増加することが確認されたという。また、「週に300g以上」で、出血性脳卒中(脳内出血+くも膜下出血)で2.38倍、脳内出血で2.85倍、脳梗塞で2.03倍と発症リスクの増加が認められたとするが、虚血性心疾患では、発症数が少なく、はっきりした傾向はみられなかったともしている。

また、アルコール摂取量と全脳卒中の発症リスクについて、年齢(40-55歳/56-69歳)、高血圧既往(あり/なし)、喫煙状況(喫煙/喫煙していない)に分けて検討したところ、若い群、高血圧なし群、喫煙していない群でリスクが高くなる傾向があったが、高齢群、高血圧群、喫煙群と比較して明らかな差(交互作用)は認められなかったという。

研究グループでは、厚生労働省が推進する21世紀における国民健康づくり運動である「健康日本21」においても女性は、男性よりも体格や肝臓が小さく、アルコールの代謝が遅いことや、女性ホルモンの影響などから、より少ない量のアルコール摂取が推奨されているが、この点が今回の研究からも確かめられたと言えるとしており先行研究から、1日1合以上の飲酒による乳がん発生のリスクが増加するという報告があることも踏まえ、女性の健康維持のためには、1日1合未満の節酒が望ましいと考えられるとコメントしている。

アルコール摂取量と脳卒中・虚血性心疾患の発症リスクとの関連