京都大学は8月26日、波長変換材の一種であるプラスチックによる光の波長変換の新たなメカニズムを発見したと発表した。

同成果は、同大 原子炉実験所 中村秀仁助教(放射線医学総合研究所 客員協力研究員、千葉市 科学都市戦略 専門委員)、副所長 高橋千太郎教授、佐藤信浩助教、放射線医学総合研究所 白川芳幸部長、北村尚係長らによるもの。詳細は、英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

現在、測定対象の光の波長とその光を受ける側(検出器や植物など)の感度のミスマッチを解決するため、光の波長を変換する素材の一種として蛍光剤を添加したプラスチックが開発され、幅広い用途で利用されている。しかし、そのメカニズムは、必ずしも十分に解明されていなかった。このため、同分野での新たな素材開発や応用におけるブレークスルーは停滞しがちだった。

研究グループでは、光の波長を変換するプラスチックのメカニズムを明らかにするため、蛍光剤の濃度を広範囲(0~約1万倍)で変化させた高純度のプラスチックを製造し、それらの光の応答を調べた。その結果、ベース素材であるプラスチックと蛍光剤間で濃度ごとに異なる混合状態が形成されることを新たに発見。また、その状態により、3つに区別された段階で変換された光が放たれるという新しい光の波長変換メカニズムが明らかとなった。さらに、濃度の増加により変換できる波長は、可視光領域を超えて紫外光領域まで著しく広がることも見出したという。

今回の結果から、光変換プラスチックにおける光の波長変換の新たなメカニズムが明らかにされたことから、このメカニズムを利用して目的に適した波長変換できる素材の開発が可能になったと研究グループでは説明するほか、今後、光技術産業、電子機器産業、素材産業、さらにはアグリ事業まで応用範囲が拡大することが期待されるとコメントしている。

製造したプラスチックに紫外光を照らした様子。一番左は、蛍光剤を添加していないプラスチック。その次から右にかけて、蛍光剤の濃度は増加する。紫外光を吸収して、濃度により青色から緑色の光を放っている