公式な発表はないものの業界における暗黙の話題として、携帯キャリアがAppleのiPhoneを販売を行う場合、指定期限内に特定金額の端末購入を確約する「コミットメント」と呼ばれる販売契約が存在するという話がある。米Wall Street Journalの7月11日(現地時間)の報道によれば、米最大手キャリアのVerizon Wirelessは今年中に235億ドルのiPhoneを販売するノルマを抱えており、現状の販売ペースでは達成は難しいのではないかと予測されているという。

WSJによれば、この分析を行っているのはMoffett ResearchのアナリストCraig Moffett氏で、Verizon Wirelessが現在公開している情報を分析したところ、同社はAppleと450億ドルのiPhone販売契約を結んでおり、少なくとも今年2013年中に235億ドルの販売を行わなければコミットメントが達成できないという。これは2012年の販売金額のおよそ倍で、少なくともあと140億ドル分の販売達成が必要なようだ。Verizon Wirelssは2011年2月からiPhoneの全米販売を開始しており、今年いっぱいでちょうど3年となる。おそらくは、3年単位でのコミットメント契約だとみられ、もしMoffett氏の分析が正しければあと半年が勝負ということになる。

現在のところ、全米上位6社の携帯キャリアがすべてiPhoneの取り扱いを行う、あるいは販売開始を表明している。だがコミットメント未達成のケースはいまだ報告されておらず、実際にVerizon Wirelessが未達だった場合の動向は不明だ。現時点では以前のレポートにもあるように、Leap Wireless (Cricket Wireless)のコミットメント達成に赤信号が灯っているといわれており、もし達成できなかった場合は未達分の端末購入ならびに契約停止による新端末の購入不可のペナルティが科される可能性が指摘されている。ソフトバンクによる買収が決定した業界第3位のSprint Nextelについては去年2012年からの販売開始であり、契約更新時期は3年後の2015年とみられ、Verizon Wirelessに比べると若干の猶予が与えられているようだ。

なお、コミットメントの基準はキャリアの規模に応じて一律というわけではなく、例えばVerizon Wirelessとほぼ同程度の契約数を抱えるAT&Tの2013年のノルマは38億ドルといわれている。もともと米国ではAT&Tの独占販売でiPhone提供が開始され、後に独占販売契約切れとともに最大のライバルであるVerizon Wirelessが販売契約権を得て競争に参入した経緯がある。WSJのデータを見る限り、先行して販売していたAT&Tにはノルマの面で有利な条件が提示されている一方、それに対抗するために後から参入したVerizon Wirelessにはその倍近いノルマが設定されるなど、差別化が行われている。各国の事情に当てはめれば、もし日本でNTTドコモがiPhone販売を検討していた場合、現時点でAppleから提示されているコミットメントは先行する2社のそれに比べ、かなり厳しい条件になっていることが想像できる。