岡山大学は6月25日、高血圧治療に広く使われているカルシウム拮抗薬「アゼルニジピン」と「アムロジピン」が心臓収縮をほとんど抑制しないことを単一細胞レベルで確認したことを発表した。

同成果は、同大大学院医歯薬学総合研究科(システム生理学分野)の成瀬恵治 教授と入部玄太郎 講師らによるもの。詳細は欧州の薬理系科学雑誌「European Journal of Pharmacology」に掲載された。

高血圧治療薬の1種であるカルシウム拮抗薬は血管の平滑筋にカルシウムが入ることを防ぐことで血管を弛緩させ、それにより血圧を下げる効果を得るが、心臓を構成する心筋細胞は収縮するためにカルシウムを細胞内に取り込む必要があり、これがカルシウム拮抗薬によって阻害されてしまうと心臓の血液ポンプ機能が損なわれてしまうことが懸念されていた。

今回、研究グループはマウスの心臓から取り出した一個の心筋細胞を伸展し、その収縮力を測定する技術を用いて、アゼルニジピンおよびアムロジピンには心臓抑制の副作用がないことを細胞レベルで確認することに成功したという。

特にアゼルニジピンは、通常使用量の10倍の量を投与しても収縮力は抑制されず、心臓への影響が少ない薬剤であることが判明したほか、両薬剤とも他の高血圧治療薬と併用しても心臓への影響が増強されないことも確認したという。

なお、研究グループでは、今回の成果について、高血圧に対する効果的な薬剤併用療法の開発や、心臓に問題を抱えたハイリスクの高血圧患者に対する効果的な治療薬投与法の開発につながることが期待されるとコメントしている。

右が今回の単一細胞による研究。心筋細胞を1つだけ取り出して行うため、他の組織の分泌物や全身からの反射の影響を除外し、薬剤の影響のみを抽出し明らかにすることができるという特長がある