「脇坂クリニック大阪」の脇坂長興院長

加齢に伴う髪の悩みは、多かれ少なかれ誰でも持つもの。だからこそ、まことしやかに飛び交う、髪と頭皮に関するウワサや都市伝説もいっぱいあります。そこで、薄毛に関する素朴な疑問や、誰にでも役立つケアの話、そして気になるあのウワサの真相まで、専門家の先生に質問!

抜け毛の予防から、発毛治療など最先端の医療を提供する頭髪治療専門病院「脇坂クリニック大阪」の脇坂長興院長に聞いてみました。

毛先カットで髪が早く伸びる?

Q1.まずは一番有名なウワサ、「雨に濡れると髪が薄くなる」について教えてください!

A1.別に雨自体は髪に悪くはないんですが、これは公害が社会問題化した頃に言われ始めたウワサですね。いわゆる酸性雨が頭皮に影響があるかどうかという話です。

たしかに酸性の度合いが高ければ、頭皮に対してピーリングのような現象が起こりますが、大体今の日本の雨はph4~4.5程度。必ずしも、頭皮を傷つけると断言できるほどの数字ではないですね。ただし、状況は変わりますので、雨に濡らさないにこしたことはありません。

Q2.男性よりも女性がよく耳にするウワサですが、毛先をカットすると髪が伸びるという話が一般的によく言われます。

A.これはないです(笑)。髪は毛根でできて伸びるわけで、毛先というのはもう死んでいるんですよ。死んだ髪をカットしたところで、毛根に影響は与えません。こまめにカットした方がきれいに見えるところから、そういう話になったんだと思います。

Q3.頭皮を叩くといい髪が生えてくるって本当ですか?

A3.昔、頭を叩いて髪を育てるというCMが話題を呼びました。たしかに適度な刺激は頭皮にいいですよ。ただ、粗悪なブラシで叩いたり、やりすぎてしまうと逆に頭皮を傷つけてしまうことがありますので、あくまでも「適度」に。

Q4.辛いものを食べると髪に悪いって本当ですか?

A4.別に刺激物が髪に影響を与えることはありませんが、恐らく、辛い物を食べる=汗をかく=頭皮に悪い影響、という連想からこういう話が出てきたのだと思います。

汗をかくこと自体は頭皮に悪くありませんが、汗が酸化して毛穴につまって、抜け毛が起こりやすくなるということはあります。「帽子のムレが髪に悪い」というウワサも同様です。

とはいえ、こういう場合、毛は抜けても3カ月後くらいに再びはえてきますので、深刻になることはありません。ただ、やはり清潔にしておくにこしたことはありませんので、特にフケ症の方、頭皮に傷があるときなどは、帽子をかぶりっぱなしにせず、清潔を心がけてください。通気性のよい帽子を選ぶのもいいでしょう。

薄毛は隔世遺伝? 祖父を見るたびに不安が……

Q5.若いうちにわかる、薄毛の人の傾向ってありませんか?

A5.男性女性問わず、髪が抜けおちたものを見ると不安になる人は多いと思います。加齢とともに髪が細くなったり、薄くなるのは誰にでも起こりうるもの。ただし、髪は1日に100本前後は抜けるもので、ブラッシングや洗髪時に抜けた毛については、そんなに心配はありません。

もし、生まれての毛が抜けた場合、つまり短い毛が自然に抜け落ちているようなときは黄色信号。医師に相談することをおすすめします。

その抜け毛をどこでチェックすればいいかというと、毎朝、枕を見るといいんです。枕に短い毛が多く抜け落ちていないか、気にかけてみてください。

Q6.親が薄毛だともう諦めなくちゃダメ? 薄毛は隔世遺伝するって本当ですか?

A6.男性型脱毛症に限ったお話ですが、薄毛には2つの要素があります。ひとつが男性ホルモンをより強い男性ホルモンに変える5α-リダクターゼという還元酵素の存在です。その5α-リダクターゼによって生まれる男性ホルモンDHT(ジヒドロテストステロン)が薄毛の要因となります。

2つ目の要因は、男性ホルモンに対する感受性が強いかどうか。この感受性によって、薄毛になるかどうかが決まります。感受性はXY染色体のX遺伝子で遺伝することがわかっていて、子どもはYを父親から、そしてXを母親からもらいます。

その母親はXを父親、つまり自分から見たら祖父から受け継いでいる可能性があるため、俗に「薄毛は隔世遺伝する」と言われるウワサはあながちウソではないんです。

一方で、5α-リダクターゼは常染色体を介して両親から受け継ぐわけですから、父親の影響を受けている可能性もあります。

かといって、生活環境など遺伝子以外の要因で薄毛にならない可能性もあるので、必ずしも悲観する必要はありません。

Q7.若いうちにできる薄毛対策ってありますか?

A7.よく「薄毛にいい食べ物はないですか?」と聞かれますが、仮に髪がはえる食品があったとして、それを毎日食べ続けたら、体毛も濃くなってしまいます。それよりも睡眠を5時間以上とって、ストレスをためないようにしてください。

そして、薄毛が気になるようでしたら専門医にご相談を。対策として、5α-リダクターゼの活性化をブロックする薬がありますが、実はこれは現状維持をするための方法なので、薄毛になる前に相談した方がいいでしょう。

カラーリングやパーマについては、頭皮を傷つけることさえなければ問題ありません。ただし皮膚の異常を感じたら、すぐに皮膚科の医師に診てもらってください。

Q8.エッチな人はハゲやすいとか、髪が伸びるのが早いとか、髪とエッチにまつわるウワサは多いのですが、本当でしょうか?

A8.まず、薄毛になりやすいというのは、先ほども申した通り、DHTという男性ホルモンの影響を考えると、性欲と関係している可能性は否定できません。ただ、最近の若い男性はたんぱくな方が多いようですので、一概には言えませんけど。

髪が伸びるかどうかについては、エッチな男子→男性ホルモンのテストロテンが多く出ている→同時に成長ホルモンも多く出る→髪が伸びるのが早い……ということで、あながちウソではないかもしれないですね。

意外に探ってみると面白い髪と頭皮の話。薄毛が気になる人も気にならない人も、髪の仕組みを知って、いつもよりもちょっと気にかけてみてあげては?

脇坂長興(わきさかながおき)
1962生まれ、形成外科医師。医学博士、日本形成外科学会専門医、麻酔科標榜医、医療法人翠奏会 脇坂クリニック大阪院長、NPO法人 F.M.L.理事。
聖マリアンナ大学医学部卒業。同大学病院の形成外科で「スキン・リジュビネイション」を研究。方法論よりも患者さんが一番良くなる治療を提供することが形成外科医の使命であると考えている。

(OFFICE-SANGA 平野智美)