米Googleは16日 (現地時間)、機械学習 (Machine learning)の研究などに量子コンピュータを使用できる研究施設「Quantum Artificial Intelligence Lab (量子人工知能研究所)」を発表した。同社と提携するNASAのエイムズ研究所(Ames Research Center)内に開設し、非営利の学術団体USRA (Universities Space Research Association)を通じて、その計算資源を広く研究者が利用できるようにする。
Quantum Artificial Intelligence LabにはカナダのD-Waveの512-qubit量子コンピュータ「D-Wave Two」が導入され、今年第3四半期には研究者が利用できるようになる見通しだ。
GoogleはQuantum Artificial Intelligence Lab設立の目的を「量子コンピューティングが機械学習を進展させる可能性を探る」と説明している。近年同社は、検索の予測、音声認識、車の自動運転システムなど、機械学習を応用した様々な製品開発および研究を進めている。
研究所設立についてのブログ記事においてGoogle Researchは、機械学習の難しさを家屋設計にたとえている。建築家は、土地の大きさ、必要な機能、予算などたくさんの条件を満たした上で、デザインに優れた家を作り出さなければならない。数学的に言えば最適化問題を解くような作業であり、優れた建築家は与えられた目的と制約の中で創造性を駆使して最適解を導き出す。
こうした創造性も問われる問題に対して、従来のコンピューティングは苦戦する。例えば、丘陵地帯の表面の最も低い地点を見つけ出す場合、従来のコンピューティングは傾斜降下(gradient descent)を使う可能性がある。ランダムに抽出したいくつかのポイントから下り坂が途切れるまで下るのを繰り返す。しかし、それでは丘陵の最も低い地点ではない底を何度も探ることになるため効率的ではない。量子コンピューティングは「山の背を貫き通して、その向こうにもっと低い谷がないか見通すような可能性を与えてくれる。本当に低い地点という最適解を見つける上で、これはより効果的な方法になり得る」(Google Research)。
グーグルはすでに、量子コンピュータを使った機械学習のアルゴリズムをいくつか開発したという。そのうちの1つは、高い割合でサンプルが誤ラベルされて信頼性の低い訓練データを扱えるものだという。また非常にコンパクトで、効率的な検出を実現するものもある。これはモバイルデバイスのような電源の制約があるケースで効果的だという。