宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、隔月(奇数月下旬ころ)で発行している研究本部広報誌「空と宙」の2013年3月発行号(No.52)において、低毒性高性能推薬を用いた「パルススラスタ(Pulsed Chemical Rocket with Green High Performance Propellants:PulCheR、プリキュア)」の研究プロジェクトが欧州全体の国際競争力や技術力を向上させることを目的に、欧州における研究活動を助成する欧州委員会の政策である「FP7(Seventh Framework Programme:第7次研究・技術開発のための枠組み計画)」に採択されたことが掲載された。

同プロジェクトはイタリアのALTAが取りまとめ役を務め、JAXAの推進系グループのほか、オランダBradford Engineering、イタリアDCCI(The Department of Chemistry and Industrial Chemistry)、ギリシアDEMOKRITOS(National Centre for Scientific Research Demokritos)、ポーランドIoT(Institute of Aviation)、米国Moog、仏TAS(Thales Alenia Space France)、独ZARM(The Center of Applied Space Technology and Microgravity)の8か国9社・機関が参加するもので、体内で2つの物質を作り、化学反応させて高温高圧ガスを噴射することで外敵から身を守るBombardier Beetle( へっぴりむし)の原理を応用し、低毒性の推薬を、高頻度にパルス推力(短時間な推力)で発生させることが可能な、1液式および2液式推進系システムを開発しようというもの。

具体的には、調圧システムを廃したブローダウン式のシンプルな構成を採用することでコストを削減しつつ、5気圧で推進薬である毒性の低いプロピン(C3H4)と過酸化水素(H2O2)を燃焼室に送り込み、パルス動作により高圧燃焼させることで推進力を得ようというもの。

2月7日よりALTAに関係者が集まり、キックオフミーティングが開催され、本格的な研究が開始されたという。

なお、今度の研究スケジュールとしては3年間で、システムを含めて実現性にめどをつける計画になっているという。

PulCheRのマスコット (c)Valentina Berti

開発が進められるPulCheRの機能イメージ