東京工業大学(東工大)とNTTドコモは2月27日、11GHz帯における屋外移動通信環境下での伝送実験を2012年12月11日に実施し、上り(移動局→基地局)で最大10Gbpsのパケット信号伝送に成功したことを発表した。

同成果は同大大学院理工学研究科の鈴木博 教授、同 府川和彦 准教授、同 須山聡 助教らとNTTドコモの研究グループによるもの。詳細は27日から早稲田大学で開かれる電子情報通信学会無線通信システム研究会で発表された。

近年、スマートフォンをはじめとする携帯型通信機器の爆発的に増加により、通信トラフィック量も増加、それらの機器が対象とする通信周波数がひっ迫されるようになってきており、LTE-Advancesの次の世代以降では、従来は電波の直進性が強いため、移動通信では利用が難しいとされていた5GHz帯以上の高い周波数帯における信号伝送の実用化に向けた議論が進められるようになっている。

そうした状況を鑑み、研究グループでは2009年から10Gbpsを超す超高速移動通信に関する研究開発を進めてきており、今回、2012年12月11日に沖縄県石垣市浜崎町地区において、11GHz帯における屋外移動通信環境下での上り最大約10Gbpsのパケット信号伝送実験が行われた。

実験は、移動局(MS)装置から、11GHz帯における400MHzの帯域幅で、8本の送信アンテナを用いたMIMO空間多重により信号を送信するというもので、具体的にはアンテナ1本当たりの送信電力は25dBmで、測定コースを平均時速9kmで走行しながら、符号化率3/4のターボ符号で符号化し、64QAM(直交振幅変調)変調された異なるOFDM(直交周波数分割多重)信号を8本の送信アンテナで送信したという。

実際に実験に用いられた移動局装置(左)とその内部の様子(右)

一方の基地局(BS)装置は、電波の直進性が強い11GHz帯においてMIMO空間多重を安定的に動作させることを目的に、16本の60度ビーム受信アンテナを用いる8×16 MIMO伝送を行うことで、移動局装置から送信されたOFDM信号を受信、保存したという。

今回の屋外伝送実験で使用された測定コースの概要

実際に基地局装置で受信した信号をオフラインで復号処理したところ、上り最大11.8Gbpsのパケット信号伝送に成功したことが確認されたほか、MIMO空間多重における信号検出法としてターボ検出を適用することで、従来の線形検出に比較して、2回の繰り返し処理を行ったターボ検出は、10Gbps信号伝送を実現可能な範囲を広げられることも確認したという。

上り最大11.8Gbpsのパケット信号伝送におけるスループット特性

この成果について研究グループでは、これまで移動通信システムでは電波の直進性が強いため利用が難しいとされていた5GHz帯以上の高い周波数帯を用いて10Gbpsを超す伝送速度を達成したことで、超高速移動通信システムの研究開発の進展が期待できるとするほか、得られたデータの解析を進めることで高い周波数帯におけるMIMO伝送技術に関する新たな知見も得ることが考えられるとコメントしている。