国立病院機構 名古屋医療センター、名古屋大学(名大)、東京大学医学部付属病院の3者は2月22日、「先天性血小板減少症」の原因となる「ACTN1」遺伝子変異を発見したと共同で発表した。
成果は、国立病院機構 名古屋医療センター 臨床研究センターの國島伸治室長、名大大学院 医学系研究科小児科学の小島勢二教授、東大医学部付属病院がんゲノミクスプロジェクトの小川誠司特任准教授らの共同研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、2月21日付けで米国人類遺伝学会誌「American Journal Genetics」に掲載された。また、今回の研究は、名古屋医療センター、名大、東大それぞれにおける倫理審査承認を得たうえで実施されたものだという。
先天性血小板減少症は先天的に血小板の減少を呈する疾患群だが、既知の原因遺伝子に異常が認められないことから、難病の「突発性血小板減少性紫斑病」と診断される場合などもあり、確実に診断する技術の確立が求められている。そこで研究グループは今回、次世代遺伝子解析装置を用いた網羅的遺伝子解析により、新規原因遺伝子の同定と病態の解析による診断の確立と治療法を開発を目的とした研究を実施した。
具体的には、既知の原因遺伝子に異常を認めない先天性巨大血小板性血小板減少症の6家族について、遺伝子のすべてのメッセンジャーRNA前駆体上に存在するタンパク質に翻訳される必要な遺伝情報領域である「エクソン」の配列を抽出し、その塩基配列を高速に決定する方法である「全エクソン解析」を次世代遺伝子解析装置を用いて実施。 これにより同定された候補遺伝子異常の確認のために、7家系を追加解析したところ、解析した13家系中6家系(46%)でACTN1遺伝子変異が同定され、その結果、ACTN1遺伝子変異は日本人の巨大血小板を伴う先天性血小板減少症で4番目に高頻度の原因であることが判明したという。
さらに研究グループでは、同定したACTN1遺伝子変異が血小板産生に与える影響を調べるため、培養巨核球を用いた血小板産生実験が実施。この結果、ACTN1遺伝子変異から産生される「変異型アクチニンタンパク」が正常なアクチン線維形成に影響を与え(画像1)、巨核球からの血小板産生を阻害することが判明したとする(画像2・3)。
先天性血小板減少の新規原因遺伝子を発見した今回の成果に対して研究グループは、先天性血小板減少症の病院・病態の解明に役立つことが期待でき、新しい検査診断法の確立と治療法の開発につながるとするほか、今後、先天性血小板減少症の原因を解明することで的確に診断できるようになれば、特発性血小板減少性紫斑病の正診率向上および効果的診療につながったり、正常な血小板産生機構の解明へつながることが期待できるとコメントしている。