NTTは、大阪大学、電気通信大学と共同で、生物学の知見に着想を得た「ゆらぎアルゴリズム」を仮想ネットワーク制御へ適用する事に世界で初めて成功したと発表した。
この技術を用いる事で、仮想ネットワークが環境変化を察知し自律的かつ適切に経路を選択することが可能となり、トラヒック量の急激な増減や大規模災害が発生した場合においても、状況に応じた最適化・ネットワーク復旧を実現できる事を実証したという。
生体はノイズを利用して複雑なシステムを頑強かつ低消費エネルギーで動かしている。その仕組みを「ゆらぎ」と呼び、生体ゆらぎを人工物に応用してイノベーションにつなげる「ゆらぎアルゴリズム」の試みが、大阪大学を中心に展開されている。
「ゆらぎアルゴリズム」を用いた仮想ネットワークの制御技術である「管理型自己組織化制御技術」では、環境変化に適応した最適トポロジーを各仮想ネットワークで独立に計算するため、既存の最適化技術より計算時間が短く、環境変化への迅速な対応が可能となるという。
今回は、大阪大学が生体ゆらぎの知見に基づき、主導的に理論面の検討・評価や基本アルゴリズムの開発などを行い、NTTが実ネットワークへの適用に向けた制御アルゴリズムの改善、制御サーバ開発、技術実証などを行ったという。
また、仮想ネットワーク上でICT機器のリソース競合が発生した場合、迅速に調停して性能回復を実現するリソース制御技術である仮想ネットワーク調停技術については、大阪大学が仮想ネットワーク同士で状態をフィードバックし制御を安定化する仕組みを開発し、NTTが特定の仮想ネットワークを隔離するリソースアクセス制御の仕組みを開発した。
そのほか、電気通信大学が開発した仮想ネットワーク上でネットワークトポロジー最適化に必要なトラヒック情報を効率的に収集する通信プロトコルである「経路制御情報広告方式」を利用して、ネットワーク全体ではなく、隣同士の機器とトラヒックの情報を交換しながら、輻輳が発生している機器の情報のみを選択的に情報収集することで抜本的に情報収集の負荷を削減するという。
なお、独立行政法人情報通信研究機構(以下、NICT)が2月5日~7日の期間に開催するJGN-X広域実験イベントにて本制御技術を利用した輻輳解消実験を行う予定で、今後は、JGN-X広域実験イベントでの輻輳解消実験から得られた知見などを踏まえ、実運用に必要な機能拡充や多様な条件での技術の実証を行っていく予定だという。そして、2020年の実用化を目指して研究開発を進めていくという。