ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)に積極的に取り組まれている企業の担当者に、現場でのSMM活動の実際についてお聞きするインタビューシリーズ【企業担当者に聞くSMM最前線】

こんにちは、SMM Labの小川です。

今回は、ソーシャルメディアを通じて顧客との深い関係構築にチャレンジしている株式会社マウスコンピューター コンシューママーケティング室/室長の畦田寛之氏にお話を聞きました。

前半記事:【企業担当者に聞くSMM最前線】株式会社マウスコンピューター 畦田寛之氏~ソーシャルメディアで「濃いファン」との関係づくりを(1/2)
http://news.mynavi.jp/news/2012/12/21/012/index.html

株式会社マウスコンピューター コンシューマ営業統括部 
コンシューママーケティング室 室長 畦田寛之氏

投稿やキャンペーンのインセンティブは「自社コンテンツ」にこだわり

――マウスコンピューターさんのFacebookページでは、自社製品や会社の取り組みなど「自社コンテンツ」のみが発信されており、「食べ物」や「風景」などのいわゆる「いいね!」が付きやすい投稿を行っていませんよね?また、定期的に行っているキャンペーンの賞品も必ず毎回自社製品にしていらっしゃいます。その理由と、ページ運営の方針を教えてください。

投稿内容を自社製品や会社の取り組みに絞り、キャンペーンも自社製品をプレゼントにしている理由は、最終的には弊社やパソコンについて興味のある方が残っていただけるのではと考えたからです。あえて絞って「濃く」している側面があるのです。

キャンペーンの条件は、「いいね!」を押して応募するだけや、アンケートに答えるだけの簡単なものにしていますので、毎回たくさんの方に応募いただいていますし、これをきっかけに多くの新しい方にファンになっていただいています。

マウスコンピューターFacebookページ キャンペーン例
https://www.facebook.com/mousecomputer/app_196266070409836

とは言え弊社としてもその全員に本当の意味でのファンになっていただくことは難しいと考えています。集まっていただいたたくさんの方に、思う存分自社のことをお伝えすることで知っていただき、その中で弊社の本当のファンになってくれる方はそのまま残ってくださればありがたいという考え方でページを運営しています。結果的に、現在のFacebookページのファン層と、従来からの顧客層は、共に「30~40代の男性」で一致する状況になっています。

これは、もしかしたら非効率なやり方なのかもしれません。もう少し一般受けをするページ運営をすることで、より多くの新しい方にタッチでき、「今後パソコンを買う時の選択肢に入れてもらう」こともできるかもしれません。もちろん「知ってもらう活動」も広げていきますが、一方で今は「分かってもらう活動」で仲を深めていくことを重視したいと思っています。

―Facebook広告も出稿していますか?

はい、何度か出稿しています。その時もやはり多くの新しい方に入ってきていただいたのですが、自社製品をインセンティブとしたキャンペーンを活用した方が、弊社がターゲットとしている層へリーチできると考えています。現在は不特定多数ではなく、より深いファンを獲得できる施策を実施しています。今後、Facebookマーケティングで活用できる予算が増えるなどした場合は、また新たな展開があるかもしれません。

―現在、「濃い」ファンが残っているとのことですが、製品紹介の投稿から自社サイトへの流入やコンバージョンは発生していますか?

徐々に発生し始めているところです。

現在Facebookで自社製品をお知らせする投稿を入れると、700くらいのアクセスをいただけることがあります。その他にもカタログのご請求をいただいたり、メルマガ登録をしていただいたり、お電話でお問い合わせいただくこともあります。

マウスコンピューター Facebookページ 投稿例

投稿からすぐに購入というのはなかなか難しいのですが、見込顧客のレベルに応じて、ナーチャリングしやすい方法を持っておくことも大切だと思います。

Facebookページを「パソコン好きが集まる場所」にしたい

――運営にあたっての課題はありますか?

今後はもっと対話をしていきたいですね。

今もFacebookページ投稿へのコメントで、「この製品、もうちょっとこうだったらよかったのに」というご意見や、「なぜこのパーツはカスタマイズできないのですか?」などのご質問があります。実際にコメントの内容を実現したケースもありますが、なかなか全ての投稿にコメントするまでに至っていないのが現状です。

Facebookページの空気感は統一したほうがいいと考えています。特に「コメント返信」は、常に同じテンションで回答することが必要ですよね。そのためには、統一感のあるコメント返信ができる体制を整えなければなりません。そのあたりは、今後の課題だと感じています。

――今後Facebookページをどんな場所にしていきたいですか?

弊社のファンの方は新しいテクノロジーや製品が好きな方が多いので、弊社からもどんどん新しい情報をご提供し、パソコン好きな人が楽しめるFacebookページにしたいと思っています。そして、「メーカーとお客様」というよりは「パソコン好きが集まる場所」にできたらよいな、と考えています。

今後は、ファン参加型の製品開発や、開発日記などの実施を考えています。「新製品、ここまでできました!」とか、「こういうことをやろうと思っているのですが、どうですか?」とか、ファンの方が突っ込める話題も提供していきたいですね。

自然に書き込みたくなる空気感が作れればいいかな、と。そして、そのきっかけはやはりパソコンの話なのかな、と思っています。「思う存分パソコンの話ができる環境」を作っていきたいですね。

――今後「濃いファン」とどんな取り組みをしてみたいですか?

来年2013年には、新製品企画に、Facebookページの濃いファンの方を巻き込んでみたいと思っています。

以前Facebookページで新製品に求めるデザインや性能に関するアンケートキャンペーンを実施した時に、約8,000名もの方からご回答をいただけたんです。しかも、回答内容を見ていると、弊社のコアなお客様の考え方に近く、弊社が思う「濃いファン」の集まる場所になれているんだな、という実感がありました。

「自分だったらこういう製品にする」というご意見も多かったので、じゃあ本気でこちら側がファンを頼りにした時に、どういうことが起きるのかな?と。それを思うと、今から本当に楽しみですね。

ソーシャルメディアで、会社をもっとクリアに、もっと身近に

―マウスコンピューターにとって、ソーシャルメディアを活用したからこそできたことはありますか?

中の人間が言うのも何ですが、弊社はまだまだ外からは見えづらい会社だと思います。主に低価格や高性能を強調する広告が多いこともあり、「わかる方にしかわからない」という場面もあったのではと感じています。

ソーシャルメディアを始めたことによって、「そういう会社だったんですね」とか、「初めて知りました」というお声をいただけており、より会社がクリアになってきたように感じています。

店舗で販売をしている人間は直接お客様の声を聞くことができますが、それを本部のマーケティングチームが把握するのは、なかなか難しいことです。でも、ソーシャルメディアを通じてファンと顔の見えるやり取りをすることで、お客様の声が近くなってきたという実感があります。

今後はファンの方にももっとマウスコンピューターを知っていただき、「日本人だから、日本の会社から買おう」という風に思ってもらえるようになれたら、とても嬉しいですね。

<インタビュー後記>

「最初は試行錯誤だった」と語る畦田氏。それでも逃げずにファンと正面から向き合い、コミュニケーションを重ねてきたからこそ、「濃いファン」が集まるコミュニティに成長しつつあるのだと感じました。これからはさらにファンと対話を重ね、ファンと一緒に新製品の開発にもチャレンジしたいとのこと。これからの展開にますます注目です。(SMM Lab  小川)

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