東北大学は11月30日、脳機能イメージングが可能な極微細内視鏡を開発したことを発表した。同内視鏡は、保護金属管を含めて直径450μmながら、1万画素を実現しており、単一細胞の発する微弱な光を観察することができるため細胞レベルで神経活動のイメージングが可能であり、脳機能イメージングだけでなく、がん細胞の可視化など臨床への応用も期待できるという。

同成果は、同大大学院医学系研究科医用画像工学分野の小山内実 准教授ならびに東洋ガラス、群馬大学の研究グループらによるもので、詳細は日本神経科学学会の英文学術誌「Neuroscience Research」に掲載される予定。

近年、神経科学研究のための様々な光学的機能分子プローブが開発され、in vivo(生体内)で使える新たな光学計測技術の開発が期待されていた。今回開発された微細内視鏡は東洋ガラスが開発した直径350μmの屈折率分布型マイクロレンズ「SILICAGRIN」と、フジクラ製のフレキシブルな直径350μm、1万画素のイメージファイバで構成されており、これらを融着させることで、光の透過率が高く、高解像度かつ保護用の金属管を含めても外径450μmを実現。

極微細内視鏡イメージングシステムの概略図と先端部形状。左は 極微細内視鏡イメージングシステム全体の概略図と、実際に取得された蛍光写真。蛍光写真中の白く光っているところが、個々の細胞。蛍光写真中の白バーの長さは20μm。右上は極微細内視鏡の先端部の構成図、右下は実物の写真

使い方としては、既存の光学顕微鏡と結合させる形となるが、その結合の効率を最大限に追及した結果、30fpsの速度で、細胞の発する微弱な蛍光変化を捉えることが可能であり、細胞レベルでの機能イメージングに使用することができるという。

極微細内視鏡イメージングシステムで観察された細胞活動。カルシウム感受性蛍光色素を細胞に取り込ませた脳組織標本で細胞活動依存性のカルシウム濃度上昇が観察された例。左が活動の大きさを疑似カラーで表示した図。赤いほど反応が大きいことを示している。図中の白バーの長さは10μm。右は左の図で白点線で囲われた部分の、細胞活動に依存した細胞内カルシウム濃度の時間経過。縦軸がカルシウム濃度変化量、横軸が時間を示している

また、従来の開発されていた内視鏡では、顕微鏡の接合あるいは光学系の構築に専門知識・技術が必要なものがほとんどであったが、今回の極微細内視鏡では専門的な知識・技術をほとんど必要とせずに扱うことが可能だという。

なお、研究グループでは、近年、がん細胞特異的に蛍光色素を取り込ませる技術が進んできており、同極微細内視鏡を用いることで、単一細胞レベルでがん細胞を可視化することが可能であると考えられ、臨床応用も期待されるとするほか、工業的には非破壊検査などにも役立てることが可能であるため、その応用範囲は極めて広いものと考えらえるとコメントしている。