「ZMOT」という言葉を耳にすることが増えていませんか?その意味と意義を改めておさらい!

ソーシャルメディアマーケティングラボが、 なんとなく分かっているつもりでも、実はよくわからなくて「もやもや」 している?! 今知っておきたい注目のマーケティング用語をやさしく解説!

 用語説明:【ZMOT(Zero Moment of Truth)】

2010年にGoogleが提唱した購買意思決定に関するマーケティングモデル。「Zero Moment of Truth」の頭文字を取ったもので、「ジーモット」と呼ばれる。

2004年、米P&G社は『来店したお客様は商品棚を見て、最初の3秒から7秒でどの商品を買うかを決めている。』という独自リサーチから、商品配置や陳列等が購入商品を選択する決定的な瞬間を左右する、「インストア」のマーケティングモデルをFMOT(First Moment of Truth)、「エフモット」と呼んだ。

しかし、インターネットの普及により多くの情報が簡単に入手できるようになったため、消費者は店に行く前の検索や、レビュー等のクチコミ、SNS上の友人からのレコメンドから既に購入商品を決定するようになった。ZMOTとは、こうしたオンライン上での情報収集によって、FMOTの前に実質的な購買意思決定の瞬間があるとした、「プレストア」マーケティングの概念。

 解説

 消費者の購入意思決定プロセスがインターネットによって変化

P&G社は消費者の行動調査から、基本的な消費者体験を3ステップのメンタルモデルとしました。

1刺激(Stimulus)     商品の認知、興味関心の喚起 2購入(Shelf)       店頭での評価 3体験(Experience)    購入商品の評価

しかし、インターネットを使った情報収集が浸透したことで、 ・アメリカ人の70%が商品購入前にオンラインレビューをチェックしている ・消費者の79%が買い物の際にスマートフォンを活用(オンライン購入に限らず、情報収集も含む)している ・母親の83%がテレビCMで興味を持った商品についてオンラインで調べている という調査から、Googleは購買意思決定の瞬間(モーメント・オブ・トゥルース)は、店頭に行く前のネット上にあるとしました。

ZMOTは認知・興味関心の段階から、購入に至るまでの間に起こっているプロセスであり、検索エンジンの検索結果をはじめ、ニュース、ビデオ、企業の公式サイト(オウンドメディア)、バナー、リスティングを含めたオンライン広告(ペイドメディア)、ユーザーレビュー、オンライン評価(アーンドメディア)の他、SNSを代表としたソーシャルメディア(シェアドメディア)など、オンライン上で得られるあらゆる情報が購買意志決定に作用していると考えられます。

Googleの調査によると、消費者が購入の意思決定のためにチェックした情報源の平均は、2010年は5.3個でしたが、2011年は10.4個と急増しており、FMOT(店頭で商品パッケージを見たなど)で購買商品を決定した消費者が77%だったのに対して、ZMOTでは84%とFMOTによる購買決定を上回ったとしています。

参考: Google CPG Blog(The Zero Moment of Truth/ March 29, 2010 ):http://google-cpg.blogspot.jp/2010/03/zero-moment-of-truth.html

Google ZMOT公式サイト:http://google-zmot.appspot.com/

 スマートフォンによって情報収集のスピードが加速している

Googleが最初にZMOTを提唱したのは2010年3月のことですが、スマートフォンの急激な普及によって、ZMOTの重要性がより高まってきていると考えられます。博報堂DYグループ・スマートデバイスビジネスセンターの「全国スマートフォンユーザー1000人調査」によると、68.1%がテレビ番組で紹介された商品をスマートフォンで検索、40.9%が店や場所を調べて実際に足を運び、店頭での商品検討・購入時には2人に1人がスマートフォンでクチコミをチェックしているという結果が出ています。

http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2012/10/20121029.pdf

ZMOTにおいては、何らかのStimulus(刺激・きっかけ)を受けた消費者は、店頭へ行く前にSearch(検索)を行い、商品の詳細や口コミ情報を収集した段階で購入の意思決定をするようになってきていますが、スマートフォンの普及は、ZMOTにおける刺激、検索、意思決定プロセスの時間を大幅に短縮していると言えます。

 ZMOTを意識したマーケティングとは?

このように店頭接触以前の商品接触が重要性を増していることから、オンライン環境においての情報管理をどうコントロールしていくかが、マーケティングプランの大きなポイントとなってきています。ZMOTに対応するためのポイントとして、まず以下の3点を考えておく必要があるでしょう。

*消費者の興味関心をどう刺激するか?

ZMOTにおいても商品との第一接触が重要であることには変わらず、検索行動の喚起には「ニーズ」が必要です。ソーシャルメディア上での友人との会話や行動、クチコミによって喚起される潜在的な興味関心が、検索行動の動機として重要となっていますが、そもそも話題となるネタがなければクチコミは生まれません。その意味でマス広告によるStimulus(刺激・きっかけ)形成を改めて考える必要があるでしょう。

*消費者が求めている情報はなにか? その情報で消費者は買いたくなるか?

自社あるいは競合他社のユーザープロファイル分析や、Facebook、Twitter、ブログなどのクチコミから消費者のインサイトを探る「ソーシャルリスニング」などによって、本当に消費者が欲している情報はなんなのか? その情報が適切な形で提供されているか?を分析する必要があるでしょう。「検索キーワード=消費者が困っていること」と捉えて、その課題解決のために情報提供し、企業の信頼を高めることで、購入意思決定プロセスに対して積極的に関与していくことが求められます。

*その情報はみつけやすいか?

消費者が受け取る情報は増え続け、タッチポイントも増大している今、企業が伝えたいメッセージをきちんと伝えることはますます難しくなっています。そうした中で購買意思決定を左右する情報を適切な形で消費者に届けるには、従来のSEO、SMOの取り組みはもちろんのこと、ソーシャルメディアによってオンライン環境にあらかじめ商品情報を多く用意しておくことが必要です。そのためには消費者に情報伝達を手伝ってもらうべきであり、消費者がシェアしたくなるようなコンテンツを提供する事が重要です。

また、先述の通り、スマートフォンへの対応は今後ますます重要性を増すと考えられます。2011年10月にGoogleが発表したスマートフォンに関する意識・行動調査によると、(http://googlejapan.blogspot.jp/2011/10/blog-post_27.html)「スマートフォンでは検索結果は2ページまでしか見ない」人が8割を超えているということで、スマートフォンでの検索利便性を高めておくことは必須となるでしょう。

ZMOTは全く新しいメンタルモデルではなく、人間の自然な消費行動を現在のデジタル環境に照らし合わせて再定義したものと言えるでしょう。ですから、マーケティングの基本が一変するということではなく、あらゆるチャネルを使った情報発信とコミュニケーションの最適化を、現在の消費者の行動に合わせてデジタルネイティブに考えていくということではないでしょうか?

イラスト

速瀬 みさき

1993年よりホラー誌デビュー。漫画家として活動しながらエッセイ、イラスト、デザインなども手掛ける。近著コミックスは、メイド喫茶にバイトで潜入取材漫画。広告代理店勤務の夫を持ちながらも、マーケティングなにそれ?状態で執筆中!

公式サイト : http://www.nanacom.com/
Facebookページ : http://www.facebook.com/hayase.mi
用語解説:ソーシャルメディアマーケティングラボ

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