ロート製薬は11月7日、肌の糖化に関する研究を行い、3次元培養表皮モデルにおいて、糖化により表皮の透明感が消失し、さらに抗糖化素材を配合した製剤を塗布することで透明感が保たれることを確認、同時に糖化した角層では水分保持能力の指標である「結合水」が減少することも発見し、さらには細胞の糖化は表皮基底細胞でも起こり、表皮全体で糖化が進行することも解明したと発表した。

同社が所有する研究拠点「ロートリサーチビレッジ京都」では、「再生美容」や「機能性素材の探索」をテーマに掲げ、基礎研究や素材開発など、より川上の研究を積極的に推進している。

肌の老化は加齢による「自然老化」と紫外線による「光老化」に分けられ、そのうち光老化が80%とおわれている。紫外線による肌内部で起きている反応としては「酸化反応」と「糖化反応」があり、最近では肌の糖化に関する研究も進んでいるところだ。

中でも、同研究所が最近になって注目しているのが糖化である。同社は糖化と肌老化の関係についてかねてより研究を重ねていたが、今回、最も上層となる表皮の糖化に肌老化のカギがあると考え、表皮細胞に着目した研究が進められた。

糖化とはタンパク質に糖が結合する現象で、糖化による最終生成物を「AGEs(advanced glycation end products:終末糖化合物)」と呼ぶ。血管で糖化が起こると、AGEsの蓄積により毛細血管障害が起こり、肌の真皮ではコラーゲンの糖化により線維が固くなり、ハリ弾力の低下を引き起こすなど、肌老化の原因の1つになるといわれている(画像1・2)。

画像1。うるおい・ハリのある健康な肌

画像2。うるおい・ハリ・弾力が少ない肌

今回の研究では、表皮細胞の糖化により形成される角層(角質)の色が黄色く変色し、見た目の透明感が減少することが判明(画像3)。また、抗糖化成分を配合した外用剤の使用により、透明感が保たれることもを確認されている(画像4)。

3次元培養表皮モデルの角層に対して、通常のスキンケアと同様の塗布方法を用いているため、より実使用に近いデータを得ることができたという。試験方法は、表皮の3次元培養皮膚に各試薬を2週間塗布し、色の評価が行われた。

画像3。左から通常培地、糖化誘導物質含有培地、糖化誘導物質含有培地に製剤塗布したもの

画像4。黄色味。製剤によって、黄色味が抑えられるのがわかる

また、糖化した角層では「結合水」が減少し、保水能の低下、さらには肌の乾燥につながることが示唆された形だ(画像5)。糖化した角層では、無処理の角層に比べて結合水量が26%低下したことが確認された。試験方法は、ヒトのかかと角層を脱脂後に糖化処理が施され、その結合水量が測定された。無処理のものを100として比較している。

画像5。糖化した角層では、結合水が26%低下することが判明した

なお結合水とは、タンパク質など、体内の高分子が保持する一定量の水分のことをいう。通常の肌では20~30%の水分が結合水として保持されている。タンパク質が持つ水分保持能力のバロメータだ。

さらに、表皮の糖化は、一番下の細胞の分化開始点である「基底層」に多く存在するタンパク質である「ケラチン5」および「ケラチン14」でも糖化が起こっていることが確認された(画像6)。つまり、分化のスタート地点から糖化が起こり、表皮全体に広がっている可能性が見出されたのである(画像7)。なお試験方法は、表皮細胞に糖化処理を施し、AGEsおよび「ケラチン1」、ケラチン5、「ケラチン10」、ケラチン14を免疫蛍光染色法により観察した形だ。

画像6。上から、ケラチン、AGEsの免疫蛍光染色法による顕微鏡写真と、その合成画像

画像7。皮膚の垂直断面の構造

肌の透明感は、さまざまな要因により失われるが、今回、糖化も透明感を左右する要因となることが判明。同社は今後、さらに糖化した細胞の詳しいメカニズムを追求すると共に、糖化に着目した抗老化化粧品の開発に研究結果を応用していきたいと考えているとした。