京都大学は10月30日、京大を中心とした、岡山大学、東京大学、愛媛大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)からなる共同研究グループが、プレートの沈み込み帯のマグマ発生メカニズムに関して、新しい仮説を提案したと発表した。

今回発表された仮説は、京大 理学研究科附属 地球熱学研究施設の川本竜彦助教、岡山大学の神崎正美教授、東京大学の三部賢治助教、愛媛大学G-COEの松影香子准教授、JAMSTECの小野重明主任研究員らの共同研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、米国東部時間10月29日付けで米国科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」電子版に掲載された。

日本列島の下には、太平洋プレートとフィリピン海プレートが沈み込んでいる。プレートには水が含まれていて、沈み込みながら温度圧力が上がり、徐々に水を放出していく。そしてその水は海溝の近くでは地震を起こし、有馬温泉のような湧き水として地表に戻ることもある。

さらに深く沈むと、沈み込むプレートから「水に富むもの」が出て、マグマ発生の引き金になると考えられていた。ただし大きく2通りの考え方があり、この「水に富むもの」が水で、それが加わることによってマントルが溶けてマグマが発生するのか(画像1)、それとも沈み込むプレート自身が溶けてマグマになるのか(画像2)は、長い間議論されているところだ。日本では水説(画像1)が、米国ではマグマ説(画像2)が主に信じられているのが現状だ。

画像1。主に日本で信じいられている、「水に富むもの」が水であり、それが加わることによってマントルが溶けてマグマが発生するとする説の模式図

画像2。主に米国で信じいられている、沈み込むプレート自身が溶けてマグマになるとする説の模式図

研究グループは今回、兵庫県にある理化学研究所が所有する大型放射光施設「SPring-8」の放射光X線によって、地球深部でのマグマと水の溶け合う条件を決定した。

その結果、深さ80kmよりも深いところでは、沈み込むプレートからマグマと水の中間的な性質を持つ「超臨界流体」が作られ、マントルに加わるという提案となったのである。

そして、この超臨界流体はマントル中を上昇する途中で、再び水とマグマに分かれ、分かれた水はマントルを溶かして新たにマグマを作っていく。そのため、従来の説では、沈み込み帯のマグマには、プレートが溶けたマグマと、水溶性成分に富むマグマが観察され、どちらを重視するかでプレートからマグマが来るのか、水が来るのかの論争になっていたというわけだ。

今回提案された新しいモデル(画像3)は、その中間の性質を持つ超臨界流体がプレートからマントルに来て、マントル内で分かれると提案しており、日本列島や合衆国西海岸のようなプレートの沈み込み帯での火山のできかたの理解を一新させるとしている。

画像3。今回提案されたモデル