これまで長い間論争が続いていたジャポニカ米などのイネの栽培起源地について、国立遺伝学研究所や中国科学院上海生物科学研究所などの研究チームは、中国南部を流れる珠江(しゅこう、the Pearl River)中流域であるとの研究結果を、英科学誌「ネイチャー」(オンライン版)に発表した。
研究チームは、アジア各地から収集した野生イネ(ルフィポゴン)446系統、ジャポニカ米やインディカ米などの栽培イネ1083系統のゲノム(全遺伝情報)を解析し、1529系統間の相互関係を明らかにした。さらに遺伝的変異のパターン解析から、ジャポニカ米とインディカ米では55のゲノム領域で、イネの脱粒性や芒(のぎ)の有無、粒幅などの重要な形質について、栽培化による選択が行われていたことが分かった。
これらの遺伝的な指標を用いてイネの系統進化を解析し、さらに各系統の生息地の情報を比較した結果、イネの栽培化は中国南部の珠江の中流域で始まり、1つの野生イネ集団からジャポニカ米が生まれたことが分かった。その後、ジャポニカ米の集団に別の野生系統のイネが複数回交配してインディカ米の系統が作り出されたと考えられるという。
イネの起源地についてはこれまで、遺跡の調査結果などから何十年にもわたり論争が続き、インド・アッサム地方から中国・雲南省にかけての地域や、中国の「長江」中・下流域などとの諸説があった。研究チームは「今回のわれわれの解析で、イネの起源地と栽培化のプロセスが明らかとなり、長い論争に終止符を打つことができた」としている。