国立天文台の本間希樹准教授や鹿児島大学、韓国天文宇宙科学研究院、独マックスプランク電波天文研究所などの研究チームは、地球や太陽系が含まれる「天の川銀河」の基本尺度を、巨大な電波望遠鏡を使った三角測量によって正確に決定した。その結果、天の川銀河の回転速度は従来値よりも速く、銀河全体の質量もこれまでの推定値よりも20%ほど大きいことが分かった。

天の川銀河の精密測量は、岩手県奥州市と鹿児島県薩摩川内市、東京都小笠原村、沖縄県石垣市の4カ所に設置された直径20メートルの電波望遠鏡を結んだ巨大観測システム(VERA;VLBI Exploration of Radio Astrometry)で行った。これらの4つの電波望遠鏡で同時に観測することにより、直径約2,300キロメートルの日本列島サイズの望遠鏡と同じ性能を持つ。その位置測定精度は10マイクロ秒角(3億6,000万分の1度)と、月面上に置かれた1円玉を地球から見分けられるほどの世界最高の観測精度だという。

研究チームは、天の川銀河にある52個の天体の動きを精密に調べ、解析した。その結果、天の川銀河の基本尺度である太陽系から銀河中心までの距離は2万6,100±1,600光年、銀河中心を回る太陽系の回転速度は秒速240±14キロメートルとの数値が得られ、その距離と速度から、太陽系は天の川銀河内を約2億年で1周していることが分かった。

太陽系における銀河回転速度は1985年以来、秒速220キロメートルが国際天文連合による推奨値とされているが、今回の測量では、それよりも10%ほど早かった。太陽系と銀河中心までの距離は、推奨値とは誤差の範囲内で、ほぼ一致した。

さらに、銀河の回転速度は銀河の重力と釣り合っていることから、銀河全体の質量を計算することができる。それによると、天の川銀河の質量はこれまでの推定値よりも約20%増加することが分かった。質量のほとんどは、天の川銀河に存在する正体不明の「暗黒物質(ダークマター)」によるもので、暗黒物質の量がこれまで考えられていた以上に大量であることを意味するという。

関連記事

ニュース【ハッブル宇宙望遠鏡が暗黒物質を観測】