NECは10月9日、マンガン系リチウムイオン2次電池の高電圧動作を実現する正極と、高電圧動作時の安定性を向上した電解液を開発したことを発表した。同成果の詳細は、10月7日~12日の間、米国ハワイにて開催されている電気化学に関する国際学会「PRiME2012」において発表された。

NECが開発した次世代マンガン系リチウムイオン2次電池

同社は電気自動車(EV)や家庭用蓄電池向けに、埋蔵量が豊富で安価なマンガンを正極に採用したリチウムイオン2次電池を開発ならびに生産を行っているが、重量当たりの容量(エネルギー密度)の向上が課題となっている。

そこで同社では、そうした課題解決に向けて、電池の高電圧化や、正極表面で発生する電解液の酸化分解を抑制する電解液の開発を進めてきており、今回開発された正極と電解液もその成果の1つとなっている。

この正極と電解液により電池の安全性を維持しながら、エネルギー密度を約30%向上し、大容量化・軽量化を実現することが可能となり、これによりEVの航続距離の延伸や蓄電システムの軽量化、セル数の低減によるバッテリーシステム管理の簡易化などが可能になるというほか、高電圧駆動ながら、従来の4V系リチウムイオン2次電池と同等の長寿命も実現したという。

具体的には、従来から採用している、充電時の安全性が高いスピネル構造のマンガン系正極について、材料の一部をニッケルに置換することで高電圧動作を実現。同正極と黒鉛負極を用いることで、平均動作電圧を従来の約3.8Vから約4.5Vに高電圧化し、これによりエネルギー密度を約150Wh/kgから200Wh/kg以上と約30%向上された。これにより同じ重量の電池では蓄積エネルギーを約30%向上する一方、同じ蓄積エネルギーの電池では重量を約30%低減することが可能となった。

さらに電解液の溶媒を、従来のカーボネート系から、耐酸化性の高いフッ素化溶媒に変更したことにより従来の課題だった、正極と電解液の界面で発生する酸化分解を抑制することに成功。これにより室温下(20℃)において500回の満充放電サイクル試験後で初期容量の約80%、高温下(45℃)において約60%と、従来の4V系電池と同等の寿命特性を実現したほか、セル内部のガス発生を抑制し、高温下でのサイクル試験後の電池の膨れ率を、従来の2倍以上から約10%と低減し、実用性を向上させたという。

なお同社では今後も、同電池の容量・寿命・信頼性などの改善を進め、EVや大型定置型蓄電池への適用を目指した研究開発を進めて行くとしている。

今回開発された高電圧リチウムイオン電池の概要