昭和電工は10月1日、大阪大学 菅沼克昭教授と共同で、印刷により自由にパターン形成が可能な銀ナノワイヤーインクを開発したと発表した。また、合わせて銅と銀のハイブリッドインクを開発した。

銀ナノワイヤーインクは、透明でシート抵抗の低い導電膜を形成できることから、タッチパネルなどの透明導電膜に使用されるITOの代替として期待されている。しかし、従来の銀ナノワイヤーインクは、インクの性状から印刷によるパターン形成が難しい他、基板にコーティングした後、熱処理とエッチング加工が必要となるため、耐熱性の低い樹脂基板の使用が困難であり、工程も複雑という課題があった。今回、インク性状に改良を加え、密着性を向上させたことにより、樹脂基板などにも自由に回路を印刷することを実現。さらに、米NovaCentrixのPhotonic Curing技術を用い、瞬時に焼成させ、導電性を発現させることに成功した。なお、銀ナノワイヤーを用いた導電膜はITOで必要とされるレアメタルのインジウムを使用しないため、資源制約の問題もない。

また、銅と銀のハイブリッドインクを合わせて開発した。銀インクはすでに広く使用されているが、高価であり、マイグレーションが大きいことが課題として挙げられていた。今回のハイブリッドインクは、銅ナノ粒子に少量の銀ナノ粒子を添加したものであり、このインクを用いて印刷されたパターンをPhotonic Curingで焼成すると、銅の比率が高いにも関わらず銀インク並みの導電性が得られ、かつマイグレーションも小さく抑えるという。同製品は、従来の銀インクやペーストの低コスト代替品として使用することができる。

導電性インクなどを用いるプリンテッドエレクトロ二クスは、印刷技術を応用し電子回路やデバイスを形成する技術であり、製造工程が従来の製法に比較し大幅に簡略化されると見られることから市場の拡大が期待されている。同社は将来の市場拡大に備え、引き続き銀ナノワイヤーの透明導電膜への応用について開発を進めて行く方針。また、銅と銀のハイブリッドインクについては、10月よりサンプル出荷を開始する。