いったん非常勤職に就いてしまうと常勤職に就きにくい―。こうした状況が大学院博士課程修了者にも見られることが、科学技術政策研究所が10日に公表した調査資料から明らかにされている。

調査の対象者は2002-06年度に国内の大学院博士課程を修了した約75,000人。このうち9.3%を占める人文科学(文学、史学、哲学など)系の場合、博士課程修了者のうち約15%が、博士課程終了直後にポスドクと呼ばれる任期の付いた研究者になっている。これとは別に非常勤の大学教員となった人が約16%いて、任期付きでない専任の大学教員は約29%となっている。

修了後5年たった時点で、修了直後ポスドクだった人のうち、約57%が専任の大学教員という安定した職に就いていた。これに対し、修了直後に非常勤の大学教員となった人で5年後に専任の大学教員になれたのは約25%。約66%は非常勤の大学教員のままだった。

人文科学とほぼ同じ博士課程修了者のいる社会科学(法・政治学、商・経済学、社会学など)系でも、同様の傾向が明らかになっている。博士課程修了直後にポスドクだった人の約74%が5年後に専任の大学教員になっているのに対し、修了直後に非常勤の大学教員になった人で5年後に専任の大学教員になった人は、50%にとどまっていた。

博士課程修了者の12%を占める理学の場合、修了直後に安定した職に就くのは人文、社会学より難しい。専任の大学教員になったのは約6%だけで、約44%はポスドク、非常勤の大学教員が約5%となっている。修了直後ポスドクだった人の約33%が5年後に専任の大学教員の職を得ているが、ポスドクのままの人が約45%いる。

博士課程修了直後に非常勤の大学教員になった人のその後は、人文・社会学の修了者同様で、専任の大学教員の職に就けたのは約21%にとどまっている。約51%非常勤の大学教員のままで、ポスドクも約15%となっている。

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