東北大学は9月4日、同大学病院内科・総合感染症科の児玉栄一助教が京都大学に在籍中に、日本たばこ産業(JT)と共同研究した抗エイズ薬「エルビテグラビル(HIVインテグラーゼ阻害剤)」を含む配合錠「Stribild」が米国食品医薬品局(FDA)の承認を得たことを発表した(Gilead Sciencesが新薬承認申請)。
エイズは、後天性免疫不全ウイルス(HIV)が免疫に重要なリンパ球の「CD4陽性T細胞」に感染して破壊するため、多種多様な病気と闘う抵抗力が低下してしまい、本来なら自分の力で抑えることのできる感染症を抑えられなくなることで、死に至る病気だ。世界中で3400万人以上の感染者がおり、日本でもその感染は8年連続で1000件を超え、累計で2万人を超えている。
近年、複数の抗HIV薬を用いることによって、免疫力が回復し、感染者の寿命は非感染者の寿命に近くなってはきた。感染して発病したら数年以内に死亡、というイメージだった不治の病が、今では生涯つきあうような形となっている。さらに、こうした治療によってHIV感染者からの感染拡大も阻止できることが明らかになってきた。
しかし、長期間にわたる治療中に感染者の中には、抗HIV剤に対して耐性を獲得した「薬剤耐性HIV」と呼ばれる変異株が出現して、治療効果が得られなくなることや、服薬しなければならない錠数が増加してしまうことも問題になっている。
児玉助教とJTが共同研究したエルビテグラビルは、ほかのクラスの抗HIV薬に対して高い耐性を獲得したHIV変異株であっても強力な抗HIV活性を示すのが特徴だ。
Gilead Sciencesは、既存の逆転写酵素阻害剤などと今回の新薬の計4剤を組み合わせた形で薬剤にした。配合されているのは、同社がこれまで販売してきた既存の逆転写酵素阻害剤が「エムトリシタビン」と「テノフォビル ジソプロキシフマル酸塩」、そして今回の新薬のエルビテグラビル、そして同社が開発した薬剤「コビシスタット」の合計4剤となっている。
なお、テノフォビル ジソプロキシフマル酸塩は従来の「テノフォビル」の体内への吸収性を上げるために、ジソプロキシフマル酸塩を追加した改良型だ。またコビシスタットは、エルビテグラビルなどほかの3剤が肝臓で分解されてしまうのを阻害するため、つまりは血中濃度を高くするために配合されている。この4剤が連携することで、1日1回1錠を服用するだけで、これまでの抗レトロウイルス療法と同等以上の効果を示す効力を発揮できるというわけだ。
ちなみに日本国内では、JTがStribildの2012年度内の製造販売承認申請を目指している。