東京商工リサーチはこのほど、「2012年主な上場企業希望・早期退職者募集状況調査」の結果を発表した。同調査は、上場企業を対象に2012年1月以降、希望・早期退職者募集の実施を情報開示し、具体的な内容を確認できた企業を抽出したもの。資料は、原則として会社情報適時開示の「会社情報に関する公開資料」(2012年8月30日公表分まで)に基づいている。

それによると、2012年1月以降、希望退職および早期退職者募集を実施した上場企業のうち、具体的な内容を確認できた企業は50社に上り、前年(1月~12月累計58社)を上回るペースで推移していることが明らかになった。

総募集人数(募集人数が不明の場合は応募人数をカウント)は1万5,174人となり、2011年通年の8,623人と比べて現時点で1.7倍を記録。募集人数の1万5,000人超えは、2008年9月のリーマン・ショックに端を発した世界同時不況の影響で、上場企業のリストラが増大した2009年の2万2,950人以来、3年ぶりとなるという。

主な上場企業 希望・早期退職者の募集実施推移

個別企業で募集人数(募集人数が不明の場合は応募人数をカウント)が最も多かったのは、半導体大手のルネサスエレクトロニクス(グループ会社を含む)の5,000人。以下、日本電気(同)の応募人数2,393人、シャープ(同)の募集人数2,000人、軽自動車の受託生産を行う八千代工業の応募人数771人、液晶パネル製造装置大手のアルバック(同)の募集人数700人と続いた。募集または応募人数が100人を超えた企業は19社となる。

総募集人数が8月までに1万5,000人を超えた要因として、日本電気やシャープなどの大規模な人員削減が大きく影響していると考えられる。東京商工リサーチは、「高止まりした円高で価格競争力が低下した電機メーカーなどの深刻な業績不振を浮き彫りにした格好だ。今後はメーカー下請など中小企業の雇用面への波及が懸念される」と分析している。

業種別で最も多かったのは電気機器の14社で、構成比は28.0%。次いで、小売5社、機械、金属製品、情報・通信が各4社との順となった。一方、市場区分では、東証1部が最も多く24社で、構成比は48.0%。これに東証2部が11社、ジャスダックが7社と続いている。

同社によると、人員削減を計画しながら具体的内容が未公表のため今回の調査に集計されない大手上場メーカーもあるという。大規模な人員削減はさらに拡大する動きをみせており、年内に計画が実行されると、2012年の上場企業における希望・早期退職者の総募集人数は2万人を突破し、リーマン・ショック時を上回る恐れもある。東京商工リサーチは、「国際競争力の低下に伴う生産拠点の海外移転が、国内の雇用不安につながる悪循環を断ち切ると同時に、雇用の受け皿となる産業の育成が急がれる」と指摘している。

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