丸紅情報システムズ(MSYS)は、固体リチウムイオン蓄電池の専門メーカーCymbetと国内販売代理店契約を締結し、小型の全固体リチウムイオン蓄電池「エネーチップ(EnerChip)」の販売を開始すると発表した。

同製品は、プリント基板に実装できる超小型の充電池で、固体の電解質を用いており、現在主流の液体の電解質を用いたリチウムイオン蓄電池と比べて熱に強く、高温の環境下でも破裂することがない。また、液体リチウムイオン蓄電池と比べ、温度変化による影響を受けにくいため安全で、液体の漏れなどの心配もなく環境に配慮した構造となっている。

また、ICチップ形状なので、電子基板へ表面実装することが可能。ICチップなど、他の部品と同じ工程で取り付けでき、ソケットなどの部品が不要となるため、電子基板の生産にかかるコストを下げることができる。

大量生産において、電子基板への部品実装には、基板にペースト状のはんだを塗布し、約260℃に熱したリフロー炉と呼ばれる炉の中ではんだを溶かして電子基板上の部品を一度にまとめて接着する表面実装が使われている。これまでのリチウムイオン蓄電池は熱に弱く、別工程で取り付ける必要があった。

同製品は安全性や小さなサイズにより、医療用をはじめ、様々なセンサ応用機器やハンドヘルドなネットワーク機器に最適となっている。さらに、屋外などの環境が良くない場所に設置される可能性がある、エナジーハーベストを応用したセンサネットワークでも安心して使用することができる。

「エネーチップ」は、表面実装に対応した外装パッケージ製品の他、昇圧回路と充放電制御回路を組み込んだ製品を提供していく。それぞれの外装パッケージに収納していない製品(ベアダイ)も用意し、高集積化や実装面積の削減などのニーズに応じて選択できる。

MSYSでは、米国ですでに採用実績のある携帯用GPS端末や光ネットワークサーバ、血糖値計、RFIDリーダ用のデータおよびクロックのバックアップ用やビルディング用空調用温度センサ、自動水栓、ドアセンサ、神経刺激装置等用の環境発電(エナジーハーベスティング)ソリューションなど向けに販売していく予定。今後、初年度1億円、3年後は3億円の売上を目指す。

蓄電池タイプの「CBC005」は、パッケージサイズが1.75mm×2.15mm、容量が5μAh、充電時間が10分(80%容量まで)。「CBC012」は、パッケージが5mm角の6ピンDFN、ベアダイサイズが2.8mm×3.5mm、容量が12μAh、充電時間が10分(80%容量まで)。「CBC050」は、パッケージが8mm角の16ピンQFN、ベアダイサイズが5.7mm×6.1mm、容量が50μAh、充電時間が20分(80%容量まで)。3製品共通のスペックは、出力電圧が3.8V、放電カットオフ電圧が3.0V、充電電圧が4.0~4.15V、充電サイクルが>5000(放電深度10%)、動作温度範囲が-20~+70℃となっている。

蓄電池+昇圧回路+充放電制御回路タイプの「CBC3105」は、パッケージが4mm×5mmの20ピンDFN、仕様は「CBC005」と同様で容量は5μAh、「CBC3112」はパッケージが7mm角の20ピンDFN、仕様は「CBC012」と同様で容量は12μAh、「BC3150」はパッケージが9mm角の20ピンDFN、仕様は「CBC050」と同様で容量は50μAh。3製品共通のスペックは、バッテリ保護、温度補正充電制御を搭載し、スイッチオーバ電圧が調整可能。チャージポンプオン電圧が2.5V、出力電圧が3.3V、動作温度範囲が-20~+70℃、10個までの外付けEnerChipの制御が可能となっている。

なお、価格は「CBC012」が1000個購入時で144円(税別)から。

蓄電池+昇圧回路+充放電制御回路タイプの「CBC3150」