米Microsoftが2012年末から2012年初頭にかけて提供を予定しているといわれる「Windows Server 2012」について、4つのエディション構成を発表した。そしてそこには「Small Business Server」ならびに同製品をベースにした「Windows Home Server」は含まれておらず、同社は「製品提供の予定はない」としており、事実上の製品ラインナップ廃止が通告されたことになる。
Windows Server 2012の4つのエディション
Microsoftが提供を予定しているWindows Server 2012の4つのエディションは下記のようになる。詳細についてはWindows Server 2012 Editionsのページを参照してほしい。
Windows Server 2012のエディション構成 | ||||
---|---|---|---|---|
エディション | 用途 | 特徴 | ライセンス形態 | 価格(米ドル、ライセンスなし) |
Datacenter | プライベート/パブリッククラウドを合わせたハイブリッドな仮想化環境 | Windows Serverのすべての機能と無制限の仮想化インスタンス | プロセッサ+CAL | 4,809ドル |
Standard | 非仮想化で低密度なサーバ環境 | Windows Serverのすべての機能とOSあたり2つの仮想インスタンス | プロセッサ+CAL | 882ドル |
Essentials | スモールビジネス向け | 事前設定されたクラウドベースサービスへの接続機能(仮想化対応はなし) | サーバ単位(25ユーザー上限) | 425ドル |
Foundation | 汎用目的サーバ向け | 基本機能のみ(仮想化対応はなし) | サーバ単位(15ユーザー上限) | OEM経由のみ |
このように、Windows Server 2012についてはSKUが4種類と、派生品の多かった従来のサーバOSに比べて非常に簡素化されている。ダウングレードライセンスに関する説明を読む限り、従来のEnterpriseエディションはStandardのポジションへと引き継がれるが、機能的な制約から大規模用途ではむしろDatacenterエディションの利用を推奨するような形になっている。そのため、スタンドアロンサーバではStandard、サーバ統合やクラウド連携などではDatacenter……というような棲み分けになるとみられる。
Small Business ServerとWindows Home Serverは廃止へ
そして今回の本題となる上記2製品の廃止に関するアナウンスだ。Small Business Server (SBS)はもともと「小規模な企業がBackOffice (SQLやExchangeなどのサーバアプリケーション)をOSとは別に導入するのはコストや手間の面からも厳しい」「専任の管理者がいない」というニーズを汲み取るためにWindows NT 4.0の時代にWindows Serverの別エディションとして提供されたのが始まりだ。「設定は半自動」「日々のメンテナンスはパートナーがオンライン経由で」といった思想もあり、初期のSBSは一般には逆に扱いづらいという問題もあったが、バージョンアップを重ねるごとに使いやすさが改良されており、現在では「数十人以下の規模の事務所でのネットワーク管理」に最適なソリューションとして認知されつつある。
一方でSBSには「用途の割には機能を盛り込みすぎ」という問題もあり、前述のサーバアプリケーションをすべて削ぎ落として、簡易な管理ツールを同梱した「Windows Small Business Server 2011 Essentials」という製品が登場した。簡単にいえば標準のWindows Serverに機能制限を加えたものに、一部管理ツールと管理用ダッシュボードを付与したものだと思えばいいだろう。これが今回のWindows Server 2012 Essentialsの前身だ。
もう1つのWindows Home Server (WHS)はSOHO向けのサーバOS製品として開発されたもので、こちらはSBS 2003をベースとして最初のバージョンが登場している。SBSからサーバアプリケーション群を省き、代わりにDrive Extenderと呼ばれるストレージ統合管理機能のほか、クライアントバックアップ機能などを新たに付与し、これらを専用コンソールから管理できるようにしている。最新のものはバージョン2にあたるWHS 2011で、ベースはやはりSBSで、大元のOSはWindows Server 2008 R2となっている。Drive Extenderは廃止されたものの、「実質1万円前後でファイル/プリンタ共有やバックアップ管理が行える」こともあり、本来の意味でSOHO用途に重宝されているOSだといえる。
MicrosoftのWindows Server 2012に関するFAQ (PDF)とWindows Server 2012 Essentialsに関するFAQ (PDF)によれば、SBSのようなサーバアプリケーションを同梱するタイプの製品は今後提供されることはなく、その理由として昨今の情勢の変化からクラウドサービスを利用するタイプのOSに変更したことを挙げている。またWHSについても、クライアントの自動バックアップやストレージ管理、ダッシュボードによる管理といった機能はすでにEssentialsにエディションに引き継がれており、今後は既存ユーザーに対してEssentialsを利用することを推奨している。
だが前掲のように、Windows Server 2012 Essentialsの基本価格は425ドルであり、現状100ドル未満で購入可能なWHSに比べればかなり高価だ。特にホームユースでWHSを活用しているユーザーには重い負担だろう。またすべての機能が引き継がれるかは保証がなく、例えばWHS用プラグインの管理や、各ユーザーに付与される「~.homeserver.com」ドメイン継続の有無などについての情報は不明だ。特に後者のドメインについてはリモートアクセスに利用しているユーザーも多いとみられ、その対策が気になるところだ。Microsoftによれば、現状のWHS 2011の一般提供は販売チャネルを通じて2013年12月31日まで行われ、あとはOEMを通した2025年12月21日までの製品提供が保証されているという。それなりに猶予があるとはいうものの、既存ユーザーの1人として今後のユーザー対応に期待したい。