ヒトなどの霊長類が手指を器用に動かせるのは、大脳からの指令が筋肉に直接送られる神経回路のほかに、脊髄にあるもう1つ別の“間接回路”によることを、自然科学研究機構・生理学研究所や福島県立医科大学、京都大学の共同研究チームが開発した遺伝子導入法によって発見した。脊髄損傷患者の機能回復にも役立つ可能性があるという。17日付けの英科学誌「ネイチャー」(オンライン版)に発表した。
霊長類は、大脳皮質の運動野が、筋肉を動かす運動神経細胞に直接つながり、手を巧みに動かす能力を身につけたことで進化したと考えられる。一方、ネコやネズミといった手先の不器用な動物では、脊髄の神経細胞を介して間接的にしか運動神経細胞につながっていない。この“間接回路”は霊長類にも残っているが、何の働きをするのか分からず、進化の過程で役目を終えたとも考えられていた。
研究チームは、2種類の遺伝子を組み込んで特定の神経回路の神経伝達を止める方法(二重遺伝子導入法)を開発した。サルの“間接回路”の働きを抑制したところ、サルは筒の中のえさをうまく手指でつまめなくなったという。
生理学研究所・認知行動発達研究部門の伊佐 正 教授によると、「二重遺伝子導入法」はヒトの神経回路への遺伝子導入も可能で、脳神経疾患の遺伝子治療の開発にもつながる新技術だ。今回の実験によって、脊髄は単なる神経反射の経路ではなく、精緻な運動を制御する高度な役割を担っていることが見つかり「教科書の常識を覆す成果だ」と話している。
研究成果は文部科学省の脳科学研究戦略プログラムによって得られた。
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