北海道と東北地方北部に生息する日本唯一の固有種ニホンザリガニの分布が、北海道・日高山脈によって東西に分断され、遺伝的に2つのグループに分かれることが、北海道大学創成研究機構の小泉逸郎・特任助教らの研究チームの調査で明らかとなった。
ニホンザリガニは成体の体長が5-6センチメートルと小型で、体色は茶褐色、体や脚が短く、ずんぐりしているのが特徴だ。かつては北日本の山地の川に広く生息していたが、現在は北海道と青森、岩手、秋田の各県に少数が分布するのみとなっている。生息地の環境破壊やアメリカザリガニなどの外来ザリガニの影響などによって絶滅の危険が増大していることから、環境省の「絶滅危惧Ⅱ類」に指定されている。
研究チームは、分布全域から採集したニホンザリガニのミトコンドリアDNAや核DNAの遺伝的変異を調べた。その結果、ニホンザリガニは地域固有性が著しく、河川ごとに独自の遺伝子型を持っていた。これは一つひとつの河川で長期間隔離され、地域個体群が形成されたものだという。
さらに、これまで一種と考えられてニホンザリガニが、別種レベルで分化した2つのグループが確認された。2グループの分布は、津軽海峡によって本州と北海道とに分かれるのではなく、日高山脈によって北海道東部および北海道西部・東北地方北部の2地域に分かれていた。
北海道・渡島半島南部と青森県・下北半島北部のニホンザリガニは互いに遺伝的な分化が小さいことから、津軽海峡がかつては陸続き(陸橋)だった可能性を示す、新たな生物学的証拠だという。
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