航続距離351kmを実現した先行開発車第2号

SIM-Driveは3月28日、都内で会見を開き、2011年1月17日から2012年3月31日の期間の予定で34社・機関が参加して進めてきた電気自動車(EV)の先行開発車事業第2号の成果として、電気自動車「SIM-WIL」を発表した。

SIM-WILのSIMは同社の社名、WILは「With Innovation and Link」の頭文字で、参加企業から提案された「各参加機関の革新的な技術と連携、団結」の意味と同時に、東日本大震災からの復興を祈願した「日本発の技術と絆」を象徴する名前とする思いが込められているという。

SIM-WILは、将来の量産展開時の信頼性とEVとしての魅力をより多く発信するための車種展開を目指して開発されたモデルで、SIM-Driveの基本技術であるダイレクトドライブ式インホイールモータとコンポーネントビルトイン式フレームを採用したほか、参加企業各社の協力を得て47の技術やスティールモノコックとスティールスペースフレームを組み合わせたボディなどを採用することで、航続距離351km(JC08モード。搭載バッテリ容量35.1kWh)を実現した。

ダイレクトドライブ式インホイールモータとコンポーネントビルトイン式フレームの概要

また、インホイールモータとしての利点を生かし、サイドブレーキを撤廃するなど、車内の居住性の向上を意識。小型車の外形サイズ(Bセグメント。本体サイズは4150mm×1715mm×1550mm)ながら、車内空間は大型車(Eセグメント)並みを実現している。

47の技術が参加企業から提供された

さらに、EVは従来の加速性能が悪いと言うイメージがあったが、0-100km/hを5.4秒で実現する加速性能(中級レベルのスポーツカーと同等性能)を実現したという。

先行開発車第1号「SIM-LEI」との各種比較

第3号事業を開始 - 社会インフラとの連携を模索

また、同社は合わせて、2011年9月11日より募集してきた「先行開発車事業第3号」に26社・機関が参加を表明し、2012年2月23日より事業を開始したことを明らかにした。同事業は2013年3月31日に完了予定で、新たな試みとして、EVとエネルギー問題の関係性を重視し、実際にEVを社会システムの中で、どのように活用していくかの実験も同時に進めていくことを特長としており、スマートグリッドやスマートホーム、スマートシティといったものとの連携を図ることを模索していくとする。そのため、参加26社の中にも自動車関連メーカーのほか、三井不動産や積水ハウス、橋本創業、三菱電機などのEVそのものよりも、EVと不動産、送電網、街づくりといった組み合わせたソリューションに興味を示して参加を決定した企業もあるという。

なお、同事業のキーワードは、「ハイパフォーマンスカー」とのことで、性能が良いというだけではなく、環境にも優しく、エネルギー問題の解決にも役立つという別の視点でのハイパフォーマンス性を加味し、環境とエネルギー問題に貢献する、皆が大好きなクルマを完成させたいとしている。

「SIM-WIL」のフロント側。右は「エアロシャッターグリル」と呼ばれているグリル部が開いた状態。これにより空力性能と冷却効率の両立が図られるようになったという

「SIM-WIL」のリア部

インホイールモータ部(タイヤ)

CHAdeMOに対応した可搬型の充電器(プロトタイプ)。CHAdeMO対応ながら、急速充電ではなく、100/200Vコンセントからの充電を想定したものとなっている

コントロールパネル(コンパネ)部とダッシュボード。全部で5枚の液晶モニタ(コンパネで1枚、その両サイドにサイドミラー下部に付いたCCDカメラ用モニタ、中央がナビなどの15型モニタ、助手席側に10型モニタ)を装備

サイドミラー。その下にはCCDカメラが付いている

助手席のダッシュボード部にあったUSBキーボード

車内照明には面発光タイプのLED照明が採用されている

先行開発車第1号「SIM-LEI」も展示されていた