Integrated Device Technology(IDT)は3月12日(米国時間)、1チップでワイヤレスの電力送電を可能にするパワートランスミッタ(Tx)製品「IDTP9030」および高出力電力伝送に対応したレシーバ(Rx)製品「IDTP9020」を発表した。
インターネットのトラフィック量は増大しているが、通信速度の向上とモバイル端末の性能向上により、従来以上にリッチなユーザーエクスペリエンスを実現するアプリケーションやサービスの提供が求められている。しかし、こうしたモバイル端末はバッテリで駆動し、充電を行うためにはコンセントが必要であり、充電を行うためにはひと手間必要となっていた。2製品を用いることで、こうしたコンセントではなく、給電ボードの上に端末を置くだけで充電が可能となる。
2製品ともにWireless Power Consortium(WPC)が定めるQi規格およびQi規格を拡張した同社独自モード(IDP Proprietary Customizable Mode)に対応しており、基本はQi規格での対応(他社チップとの電力送電時などの場合)となるが、カスタマの要求に応じてIDT拡張を適用する形となっている。具体的には、IDTP9030では入力電圧がQi規格では18-20VなのがIDPモードでは10-20V、FOD(Foreign Object Detection:異物検知)がQi規格では1/2(FOD1が異物検知時にアラート、FOD2がコインなどの大型の単体異物検知時の停止処理)、IDPモードではFOD1/2/3/4への対応(FOD3が携帯機器に異物が付着している状況で、それを検知し、電力送電を停止させる機能、FOD4が電力転送中に異物がTxとRxの間に入ってきてもそれを検知し、停止させる機能)が施されている(TxがIDTP9030、RxがIDTP9020の場合のみ対応)。また、TxとRxのセキュアな双方向通信にも対応が可能となっている。この双方向通信機能の伝送速度は500bps~1kbps程度で、使い方としてはレシーバ側の機種判別などに用い、該当キャリアの端末には無料で充電、それ以外のキャリアの場合には課金といったサービスへの応用などが考えられているという。
このTxチップの最大のポイントは競合ソリューションが9チップと多数の受動部品で構成していた送電モジュール(基板面積1800mm2)を、1チップといくつかの受動部品で同等機能を実現することができ、基板面積も360mm2へ、BOMコストは50%低減することができるようになるという。ちなみにこの基板面積は同社のエバリューションボード(1層基板)でのサイズであり、多層基板にした場合はさらに基板面積の削減が見込めるという。
一方のRxチップ(IDTP9020)だが、基本仕様はTxチップと同じ受電能力は最大で7.5W。このほかの機能としては、双方向通信用のマイコン(8ビットCISCマイコン)を搭載しており、FOD1/2/3/4へ対応しているほか、USBからの給電も考慮したUSBスイッチ機能も搭載されている。
現状、送受信方式は標準的な1コイルタイプを提案しているが、カスタマの要望次第ではその他の送受信方式に変更可能であり、数週間以内にカスタマに対してフリーポジション対応ソリューションの提供も可能になるという。
なお、2製品の供給スケジュールは、Txチップのサンプル出荷がすでに開始されており、2012年3月末には量産出荷を開始する計画のほか、Rxチップは2012年7月頭に量産出荷を開始する計画だとしており、同社としては2012年のクリスマス商戦にこれらの製品を搭載したアプリケーションが登場できればとの期待を示している。