NASAはこのほど、炭素分子「バッキーボール」が初めて固体で宇宙空間で発見されたと発表した。バッキーボールは、25年前に実験室で発見されており、気体の状態では宇宙空間での存在が確認されていたが、固体での確認はこれが初めてである。

炭素分子「バッキーボール」が宇宙空間において固体で発見されたのは今回が初めて

バッキーボールは、サッカーボール状の多面体。表面にはつながり合った輪を持っており、その形状が建築家バックミンスター・フラーによるジオデシックドームと似ていることからその名が付けられた。

NASAは今回の発表において、「この発見で、バッキーボールは宇宙にある既知の分子の中で最大のものであることがわかった」「宇宙で起こるすべての物理的過程と化学的過程に重要な役割を果たす独特な特性を持っている」という専門家による見解を紹介している(この発見は学術雑誌「サイエンス」のオンライン版に掲載される予定)。

バッキーボールは、三次元の球体構造に配置された60の炭素原子から構成される。六角形と五角形が交互に並ぶその模様は本当にサッカーボールのようだ。

研究チームはさらに今回、バッキーボールの仲間にあたるC70も初めて宇宙空間で発見した。C70は70の炭素原子から構成され、形状は楕円形のフットボールに似ている。これらの分子の種類は、正式にはバックミンスターフラーレン、またはフラーレンと呼ばれるクラスに属する。

今回の発見はスピッツァー宇宙望遠鏡の観測によるもの

バッキーボールは、惑星状星雲「Tc1」の中で発見された。

惑星状星雲は、星の残骸でできており、ガスや塵を放出する。惑星状星雲の中央にある小さな高温の星 白色矮星は、発光して放出された物質を熱する。バッキーボールが発見されたのは、おそらく星雲のこのような活動を反映していたからだろう。

なお今回の発見につながった要因としては、バッキーボールの温度がおおよそ常温であり、発見の際に使用されていたスピッツァー宇宙望遠鏡に適した温度だったことが挙げられている。100年ほど前に今回と同様の観測を行っていたとしても、バッキーボールの温度が低すぎて検知することはできなかったはずである。