京都大学(京大)は2月10日、脂肪肝や高中性脂肪血症などの脂質代謝異常の改善に有効な新規成分「13-oxo-9,11-octadecadienoic acid(13-oxo-ODA)」をトマトから見出し、肥満マウスを用いた実験で顕著な改善効果を得られたと発表した。研究は、京大農学研究科の河田照雄教授(生理化学研究ユニット兼任)および金英一同研究員らと、かずさDNA研究所の柴田大輔部長(生存圏研究所客員教授)、日本デルモンテ、千葉県農林総合研究センターとの共同研究グループによるもので、成果は米オンライン科学誌「PLoS ONE」に日本時間2月10日に掲載された。
原産地を南米アンデス高原トマトは、世界で年間約1億4100万トン、日本でも年間70万トン(両数値ともに2009年のFAO統計)と、最も生産されている野菜だ。生食だけでなく、ジュースやソースなどにも姿を変えて幅広く利用・消費されている食品素材でもある。ヨーロッパでは古くから「トマトが赤くなると医者が青くなる」ということわざがあり、トマトは健康野菜として知られている(画像1)。
これまでにもトマトに含まれる「カロテン」や「リコペン」といった抗酸化成分の健康機能性は知られていたが、今回はまったく新しい機能性成分が見出された。今回の研究は、このような身近な食品であるトマトから、肥満に伴う脂質代謝異常の改善に有効な成分を発見した初めての知見であるという。脂質異常症もしくは脂質代謝異常症とは、かつて高脂血症と呼ばれていた症状のことで、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症に分類される。
その脂質代謝異常症やメタボリックシンドロームなどは肥満から来るもので、その肥満自体は過栄養と運動不足を背景としている。そして、日本はもちろんのこと、世界的にその増加が社会問題となっているのはいうまでもない。
脂質代謝異常は、動脈硬化症などの直接的な危険因子となるため、このような代謝異常の予防・改善は重要だ。今回の研究では、身近な食品であるトマトに着目し、脂質代謝異常の改善に有効な新規成分の探索およびその機能解析を目的として行われた。
肝細胞などを用いた「in vitro(イン・ビトロ:試験管内などの人工的に制御された環境下の意味)」の解析結果から、トマト、特にトマトジュース中に脂肪燃焼作用を有する健康成分13-oxo-ODAが多く含まれることが発見された(画像2)。
そして、脂質代謝異常に対する13-oxo-ODAの有効性を評価するため、肥満・糖尿病モデルマウスである「KK-Ayマウス」を用いて、機能解析を実施。13-oxo-ODAを0.02%あるいは0.05%含む高脂肪食(60%kcal脂肪)で、KK-Ayマウスを4週間飼育した結果、13-oxo-ODA摂取は、高脂肪食による血中および肝臓中の中性脂肪量の上昇を抑制したことが判明した(画像3・A、B)。
また13-oxo-ODA摂取群では肝臓における脂肪酸酸化関連遺伝子群の発現増加(画像3・C)と同時に、エネルギー代謝亢進の指標である直腸温の上昇が認められ、13-oxo-ODA摂取により脂肪酸酸化、すなわち脂肪燃焼が亢進していることが示唆されたのである。