田中貴金属工業は1月17日、紫外線(UV)による硬化のみで、加熱硬化せずに電子回路配線を形成することができる導電性銀インクを製品化し、1月18日より販売を開始することを発表した。

今回製品化した導電性銀インクは、銀粒子に含有させる樹脂と反応開始剤の組成と配合を最適化させることで、加熱せずに室温状態でUVを照射するだけで、瞬時に電子回路配線を形成できるというもの。熱硬化式で必要だった大きな装置や加熱処理時間が不要になるため、従来よりも小さい装置面積で、単位面積当たりの生産スピードを向上することが可能となる。販売する銀インクは合計3種類で、種類の異なる樹脂と反応開始剤を混合しており、製造装置や用途に応じて材料を選定できる。

同製品で基材に回路を印刷した後、UVを約0.3秒間照射することで、室温状態でも瞬時に印刷膜を硬化して回路を形成でき、導通させることができるという。膜厚5μm以上で、電気抵抗率は10-3Ωcmと、現在一般的に使われている導電性材料と同レベルの配線を形成できる。

同製品により、ガラス基材や基板はもちろん、これまでは熱に弱いため電子回路配線を形成することができなかったポリ塩化ビニルフィルム(PVCフィルム)やポリエステルフィルム(PETフィルム)といったフレキシブルな基材にも配線が可能となる。特にゴム判の凸部分にインクを付着させて転写するフレキソ印刷法にこの銀インクをそのまま装着することで、あらゆるフィルム基材に配線を形成することができるため、印刷技術で電子部品を製造するプリンテッドエレクトロニクスの分野において、有効な配線材料となるとする。また、太陽電池(シリコン、色素増感型など)や有機EL照明の他、タッチパネルディスプレイ、電子ブック、RFIDタグ、服薬管理用の電子パッケージなど幅広い製品の電子回路に適用することが期待できるという。

なお、同社では当面、同製品を試作用のサンプルとして、太陽電池メーカーやディスプレイメーカーの他、印刷機メーカーなどに対して販売する。また、プリンテッドエレクトロニクスの本格導入に向け、製品の電気抵抗値の改善を進めるなど技術改良を図っていく。

今回販売開始する銀インクを使いフレキソ印刷法で作成した電子回路