小惑星探査機「はやぶさ」の後継機(はやぶさ2)の来年度予算を大幅に縮小することを政府・与党が求めたことに対し、元「はやぶさ」のプロジェクトマネージャ(PM)の川口淳一郎 宇宙航空研究開発機構(JAXA)教授は12月12日、「驚きを禁じえない」とし、JAXAのはやぶさプロジェクトサイト上で、はやぶさ初代の代表としての見解を掲載した

元「はやぶさ」プロジェクトマネージャの川口淳一郎JAXA教授がはやぶさプロジェクトサイトにてはやぶさ2への政府・与党の予算圧縮に対するコメントを12月12日掲載した

はやぶさは、小惑星イトカワに赴き、サンプルリターンに成功したが、あくまでそれができるという技術を実証するための試験機で、その技術を活用して、新たにイトカワとは異なる小惑星(C型小惑星)の探査を行う同型機のはやぶさ2が実際の1号機という扱いとなる。また、その後には実質的なはやぶさの後継機となる「はやぶさMkII」の計画も検討されている。

はやぶさ2は2014年度の打ち上げを目指しているプロジェクトで、総予算は218億円を計画。機体の製造や信頼性評価などを考えれば、打ち上げまでの時間的余裕はなく、来年度の要望額70億円が圧縮されれば、計画そのものに影響を与える可能性があり、こうした政府・与党の動きを受けて同氏は、本文中で以下のような、はやぶさの成果と、日本の将来に向けた発言をしている。

はやぶさ初代が示した最大の成果は、国民と世界に対して、我々は単なる製造の国だったのではなく、創造できる国だという自信と希望を具体的に呈示したことだと思う。
自信や希望で、産業が栄え、飯が食えるのか、という議論がある。しかし、はやぶさで刺激を受けた中高生が社会に出るのはもうまもなくのこと。けっして宇宙だけを指しているのではない。これまで閉塞して未来しか見ることができなかった彼らの一部であっても、新たな科学技術で、エネルギー、環境をはじめ広範な領域で、インスピレーションを発揮し、イノベーション(変革)を目指して取り組む世代が出現することが、我が国の未来をどれほど牽引することになるのかに注目すべきである。こうした人材をとぎれることなく、持続的に育成されていかなくてはならない。 震災の復興が叫ばれている、その通りだ。即効的な経済対策にむすびつかない予算は削減されがちである。しかし、耐え忍んで閉塞をうち破れるわけではない。 なでしこジャパンのワールドカップでの優勝、それは耐え忍んだから勝てたのか? そうではない。それは、やれるという自信が彼女らにあったからだ。震災からの復興を目指す方々に示すべき、もっとも大きな励ましは、この国が創造できる能力がある国だという自信と希望なはずなのだ。 (原文ママ)

また、本文の最後には、以下のような草の根的な取り組みも含めたはやぶさプロジェクトの継続に向けた広く一般の協力も求めている。

はやぶさ後継機(はやぶさ-2)を進めることに政府・与党の理解を期待したい。 この文章をお読みになった方々から、草の根的であっても、それぞれの方法であってでも、政府・与党にメッセージを出していただければと思うものです。 (原文ママ)