テクトロニクス社は11月29日、最高周波数200MHz、最大サンプルレート5GSpsを実現したハンドヘルド・オシロスコープ「THS3000シリーズ」を発表した。即日受注を開始、2012年1月からの出荷を予定している。

東日本大震災以降、省電力化への要求が強くなってきたほか、新たな発電形態としての太陽電池や電気自動車の進展、モーター駆動の船などの開発も進められるなど、新たなアプリケーションが市場に次々と登場しようとしている。そうしたアプリケーションの波形を現場で測定できるハンドヘルド・オシロスコープの要求が高まってきていたが、従来のハンドヘルド型は持ち運び性や取り扱いの容易性を重視しているため簡易測定的で、上述のような新規アプリでの利用環境に対応できないという課題があったほか、高い性能を持つベンチタイプでは、持ち運びが難しかったり、現場での電源の確保が難しかったりという課題があり、そうした性能と持ち運びの容易性を両立したオシロスコープが求められていたと同社では説明する。

同製品の開発に際しては、「グランド設備されていない信号の測定への対応や、デジタル/アナログの信号が混在する環境下でのデバッグなどの検証ニーズのほか、測定場所が暗い、電圧の基準レベルが違うグランド接地していない信号ラインの測定、ベンチやラボとフィールドでの相関測定などの環境面でのニーズもあった」とのことで、ハンドヘルドながらラボなどで使用する性能と、フィールドで求められる堅ろう性の両立を図ったという。

そのため、性能としては様々なアプリに汎用的に使用可能な100/200MHzをターゲットとしつつ、同社ミッドレンジオシロと同等の最高5GSpsへの対応、かつ4chの筐体と電気的に絶縁された入力チャネルとUSBインタフェース(データ保存用のホストポート/PC通信用のデバイスポート、各1ポート)を装備。

また、21の自動測定機能やFFTなどの波形演算機能、最大100波形/トリガまで記録可能な自動波形記録機能、Pass/Failテスト機能、トレンド解析機能などを搭載し、現場で簡単に測定ができるような工夫が施されている。

さまざまな測定機能を容易に、さまざまな現場で使えるような工夫などが施されている

さらに汎用性として、「フィールドでの要望でもっとも強かったのはバッテリ駆動」とのことで、最大7時間のリチウムイオンバッテリによる駆動を実現しており、バッテリ残量が少ない場合、予備バッテリに入れ替えることが可能となっている。また、バッテリについては、「工場などではライン電力からの電源で測定を行う場合、ノイズを拾ってしまう場合があり、そうした環境でノイズを拾わずに測定することも可能になる」という特長もあるという。

重量は2.2kgで、防塵防滴規格(IP41)に準拠。さらに暗闇などの環境でもとり回しが容易なようにコネクタやプローブなども色分けするなどの配慮がなされている。

加えて、ハードケースのトラベルキットもオプションで用意。フィールドで活用する際にも、同ケースに入れて持ち運ぶことで衝撃などから保護することが可能となっている。

同社では適用アプリケーションとして、EVのインバータや重電系のプラント、エレベータなど、可搬性と性能が求められる分野としており、そうした分野に向けて積極的に提案を行っていくとしている。

本体外観。モニタは6型

4chの入力チャネルすべてが絶縁対応となっている

2ポートあるUSBコネクタも絶縁対応済みとなっている

なお、価格は100MHz/2.5GSpsの「THS3014」が438000円(トラベルキット(TK)セットは486000円)、200MHz/5GSpsの「THS3024」が497000円(トラベルキットセットは543000円)となっているほか、オプションの予備バッテリ「THSBAT リチウムイオン・バッテリ」は34,800円(本体、TK、オプションいずでも税別)となっている。

THS3000シリーズの概要