アドビ システムズ社 Acrobat ソリューションズマーケティングディレクター マーク・グリリー氏

アドビ システムズは11月9日、Acrobat ソリューションズ マーケティング ディレクターのマーク・グリリー氏による、「Adobe Acrobat X」、モバイル向け「Adobe Reader X」を含むAcrobatソリューションに関する戦略についての記者説明会を開催した。

グリリー氏は、AcrobatとAcrobat.comにおける製品およびサービスのマーケティング戦略とその展開を、グローバルで統括している。

同氏はまず、ビジネスコミュニケーションの中心となっている同社Acrobat製品について、具体的な数字を公開した。2010年に発売されたAcrobat Xの販売本数は100万本を超え、Acrobatの総販売数は3300万本に上るという。Adobe Readerの配布数は10億、Android用のAdobe Readerのダウンロード数も2600万とのこと。

また、Webで公開されているPDFの数は5億を超え、企業内での利用を含めるとその数はさらに増えるだろうとしている。

Acrobat製品の販売数など

このような中で、AcrobatまたPDFを取り巻くトレンドとして、同氏は次の3点を挙げた。

まず、ワーキングスタイルの変化だ。社内チームだけなど閉じたチームでの働き方から、昨今では社外を含めたバーチャルなチームとの協業が増えてきている。IDCの調査によると「インフォメーションワーカーは、文書などのコンテンツを作成し、社内外の人とのやりとりに平均週17.6時間を費やしている」という。

社外のチームとの協業おいては、セキュアなコミュニケーションが必要とされており、加えて様々なデバイスでの情報共有のシーンも増えている。

次に挙げたのは、ビジネスドキュメントの役割の変化だ。これまでは文字ベースのデジタル文書が多かったが、今後は動画や音声、Webコンテンツなどを含むより動的なドキュメントが増えるだろうという。

最後に挙げたのは、効率化によるコスト削減という課題についてだ。ガートナーの調査では、「世界のCIO調査によると、業務の効率化とコスト削減が優先順位の1位と2位を占めている」という。調査による業務効率化はPDFと直接関わらない分野についても当然含んでいるが、これは、たとえば文書管理や文書のバージョン管理、配布コストなどの点での効率化として、企業にとって検討すべき課題となるだろう。

これらのトレンドや課題に対して、同氏は、Acrobatソリューションの方向性と戦略について、Acrobatは文書業務の効率化と共同作業を促進すること、ビジネスマン個人にとって使いやすくかつシンプルなツールを実現し提供すること、また機密情報の管理やセキュアな文書コミュニケーションをシンプルにし、利便性の高いマルチデバイスでの閲覧環境を進めていくと語った。

また、iOS版のAcrobat Readerのデモも行われ、パスワード付きの文書が標準のPDFリーダでは表示されない場合があるといった事例を挙げ、Acrobat Readerではパスワードでの保護や注釈の表示など、マルチデバイス環境で共有される文書の管理や、作成者の意図通りに表示されるビューワとしての機能などについてAcrobat Readerの優位性について紹介された。

なお、現在のiOS版やAndroid版のAcrobat Readerでは、注釈の追加や変更などはできないが、グリリー氏は質問に答える形で「今後、電子署名や注釈、コメントなどについての開発を予定している」と述べた。

Acrobatソリューションの方向性と戦略