NECは10月17日、電解液に従来の市販品を利用した電池との比較で、寿命を2倍以上に向上させるマンガン系リチウムイオン2次電池技術を開発したことを発表した。

同技術は、新開発の添加剤を電解液に加え、従来のマンガン系正極/炭素負極の電極と組み合わせるというもの。同技術を利用して容量3.7Ahの積層ラミネート電池(65Wh/kg)を試作し、一般的な家庭のエネルギー消費パターンに基づいて寿命予測を実施したところ、充電可能な容量が初期の70%に低下するまでの年数が、従来の約5年から約13年、同50%では約33年となり、2倍以上の長寿命化を実現したというわけだ。

これまでの研究で、高い耐久性が要求される定置用の蓄電池にマンガン系正極を用いた場合、繰り返し放電を行うことで、電解液の溶媒が分解されて負極状に被膜が形成されたり、正極のマンガンが徐々に電解液へ溶出したりするなどにより、電池の抵抗が高くなって容量が低下するという課題が確認されていた。

これまでも、マンガン系正極/炭素負極の電池において、電解液に添加剤を用いて耐久性の改善が行われてきたが、十分な特性を得られなかったという。今回開発された技術は、添加剤に独自の有機硫黄化合物を用いることで、1回の充放電で電極上へ強固な保護膜を形成し、溶媒の分解を抑制することが可能になっている点がポイントだ。開発した電解液の基礎評価を行ったところ、抵抗上昇を従来比1/2以下、サイクル寿命を従来比1.5~3倍とし、繰り返し充放電による容量の低下を抑えたというわけである。

また、前述の試作電池を用いて耐久性評価実験を行ったところ、2万3500サイクル(連続4年以上)の充放電を行い、初期容量の83%(25℃)を維持することを実証した。なお、耐久性評価実験の内容は、25℃、45℃、55℃での、1時間でフル充電と1時間で振る放電のサイクル試験による容量維持率および抵抗上昇と、同温度での保存試験(充電状態、SOC:60%)による容量、抵抗上昇などを総合的に評価したものだ。

また、今回の電池技術は、平成23年度7月より開始している、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発(大規模蓄電システムを想定したMn系リチウムイオン電池の安全・長寿命か基板技術開発)」に利用する予定であることも発表された。

なお、今回の電池技術は、家庭やビルへの設置だけでなく、より高い耐久性が要求される電力系統の安定化を目的とした大規模蓄電システムへの利用にも適しているとしている。

画像1。今回の技術を利用して試作されたリチウムイオン2次電池